2013-11-17

2013落選展を読む(2) 「気持ち」も込みの質感 対中いずみ 

2013落選展を読む(2)
「気持ち」も込みの質感

対中いずみ


7 杉山美鈴「分銅」

分銅の失せし秤に月乗りぬ  杉山美鈴
父若く向日葵に蛇みつしりと  同

最初と最後の句を挙げた。イメージ喚起力の強い作品だ。

風見せて聞かせて椎の夏木立  同
脇腹に汚水背に雪運河膨張す  同
通風孔に噴きあがりたる花の屑 同

三句並んだ作品を引いた。夏木立の句、初々しくさらっとしている。運河の句、硬質で力強い。通風孔の句は、花の屑が渦巻いて吹き上がる様が目に見えるようだ。

素材も詠みぶりも多様で、無手勝流の味わいがある。どう変貌し成長していかれるか、楽しみな人だ。

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8 髙勢祥子「構成」

夏深し水中に髪まじりあふ 髙勢祥子

海か川で、髪を水に放ってゆらゆらと揺する。それは風に吹かれるのとは違って、日常と少し位相の違う体験だ。

「初夏」だと気持ち良すぎるだろうし、「夏深し」は句に陰影を添えるようだ。が、詠みたいのは季語ではなく、自分の感覚なのだろう。

ふらここを握る手段々と熱し    同
ぎゆうぎゆうの躑躅の中をすれ違ふ 同
卵黄のつつと動きぬ夏初め     同
鎖曳くやうに消えたり青蜥蜴    同
金魚の餌振る体温計銜へつつ    同
にゆつと蚕豆革命映画見し後に   同
ハンカチに包む貝殻かしやと鳴る  同

「構成」は、今回の17篇のなかでチェックの数が一番多い。

どれも作者の身体感覚を潜って言葉になっている。だから、読み手も、躑躅の量感や卵黄のぬめりなどに共に感覚を働かせてしまう。

所謂「モノの質感」というのとも少し違う、作者の「気持ち」も込みの質感。新感覚派と言えようか。


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