2013落選展を読む(2)
「気持ち」も込みの質感
対中いずみ
■7 杉山美鈴「分銅」
分銅の失せし秤に月乗りぬ 杉山美鈴
父若く向日葵に蛇みつしりと 同
最初と最後の句を挙げた。イメージ喚起力の強い作品だ。
風見せて聞かせて椎の夏木立 同
脇腹に汚水背に雪運河膨張す 同
通風孔に噴きあがりたる花の屑 同
三句並んだ作品を引いた。夏木立の句、初々しくさらっとしている。運河の句、硬質で力強い。通風孔の句は、花の屑が渦巻いて吹き上がる様が目に見えるようだ。
素材も詠みぶりも多様で、無手勝流の味わいがある。どう変貌し成長していかれるか、楽しみな人だ。
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■8 髙勢祥子「構成」
夏深し水中に髪まじりあふ 髙勢祥子
海か川で、髪を水に放ってゆらゆらと揺する。それは風に吹かれるのとは違って、日常と少し位相の違う体験だ。
「初夏」だと気持ち良すぎるだろうし、「夏深し」は句に陰影を添えるようだ。が、詠みたいのは季語ではなく、自分の感覚なのだろう。
ふらここを握る手段々と熱し 同
ぎゆうぎゆうの躑躅の中をすれ違ふ 同
卵黄のつつと動きぬ夏初め 同
鎖曳くやうに消えたり青蜥蜴 同
金魚の餌振る体温計銜へつつ 同
にゆつと蚕豆革命映画見し後に 同
ハンカチに包む貝殻かしやと鳴る 同
「構成」は、今回の17篇のなかでチェックの数が一番多い。
どれも作者の身体感覚を潜って言葉になっている。だから、読み手も、躑躅の量感や卵黄のぬめりなどに共に感覚を働かせてしまう。
所謂「モノの質感」というのとも少し違う、作者の「気持ち」も込みの質感。新感覚派と言えようか。
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2013-11-17
2013落選展を読む(2) 「気持ち」も込みの質感 対中いずみ
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