福田若之 小岱シオンの限りない増殖
「もしわたしが三人いたら、ひとりを仲間はずれにするだろうなって思う。四人でも」
夏の夢の先客がみな小岱シオン
「嘘なんてついてないし、ただ、意味のあることを言ってるだけ」
小岱シオンの表面上の夏の雨
「このあいだ知り合った人から、今何してる? ってメール来て、めんどくさかったから、細胞分裂、って返したら、なんか話が続いちゃって」
鏡にぶつかる小岱シオンと玉虫と
「本がメディアだってみんな言うけど、むしろこの世界のほうが、私と本とつなぐ媒体なんじゃないかと思うんだけど」
蜘蛛を湿らす小岱シオンの青い舌
「、まあ。世界とかなんとかってだいぶ寒いけど」
小岱シオンの比重で暑い死海に浮く
「God-zillaっていうけど、ゴジラはいつから神様なわけ?」
ゴジラ脱がせば日焼けの小岱シオンぷはあ
「ぷはあ。『友人たちとビールを飲む行為は芸術の最高形態である』。意味分かるでしょ?」
はじまりの小岱シオンの土偶に蚊
「だから嘘なんてついてないしただ意味のあること言ってるだけだって」
小岱シオンは轢かれ飛ばされ蝉鳴く中
その人は……なんというか、あらゆる物語の背景にいそうな人で、僕には、トロイにも、ナルニア国にも、ウクバールにも、ボードレールのパリや福永耕二の新宿にも、書かれていないだけで、本当は彼女がいるように思えてならない。僕は実際、一九世紀に撮られたロンドンの風景写真に彼女を見つけたことがある。
日々を或る小岱シオンの忌と思う
「はじめまして、小岱シオンです」
また別の小岱シオンの別の夏
2014-07-27
10句作品テクスト 福田若之 小岱シオンの限りない増殖
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