自由律俳句を読む50
細谷不句
馬場古戸暢
細谷不句(ほそやふく、1882-1950)は、一高俳句会に参会し、鳴雪や碧梧桐、虚子、井泉水などの指導を受けていた。『層雲』を碧梧桐とともに去って後、『海紅』に参加。碧梧桐離脱後も、一碧楼を助けたという。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。
草餅は箱に豆餅はただ板に置かれ夕陽さし 細谷不句
状況を説明したにすぎない句だが、ノスタルジーに近いものを覚えてしまう。もっとも、私がこうした景をみたことはまずもってないはずである。
蟷螂とぶとき身軽うわれらが方へ 同
「身軽う」のけったいさが面白い句。われらはただ、驚きとまどうほかない。
春日ビフテキの店柿いろの暖簾を垂れ 同
「ビフテキの店」が、この時代に繁盛したときく。春日は地名か。現代のそれとどのように違うのか、食べ比べてみたいものである。
水を飛びたつとき鴛鴦に足があり 同
前掲の「蟷螂」の句と似た構造となっている。こうした時の発見は、記憶に残りやすいものなのだろう。
目のそこ褐色のひかり猿のまなこ冬の日の日中 同
後の刊行される『河童』にみられるような長律句を髣髴とさせる掲句。猿の目のそこのひかりには、生き物の生々しさと同時に、何とも言えない恐怖を覚えたものと思う。
2014-07-06
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