2014-09-28

【八田木枯の一句】秋の淡海言ひそびれたることありぬ  西村麒麟

【八田木枯の一句】
秋の淡海言ひそびれたることありぬ

西村麒麟


言い忘れと言いそびれは少し異なるが、句の作りとしてはどちらでも成り立つように見える。

秋の淡海言ひそびれたることありぬ
  八田木枯

でも

秋の淡海言ひ忘れたることありぬ

言ひそびれの方を知らなかった場合、こちらでも面白いかもしれない。

意味的には「言い忘れ」の方が、伝えるべきことを伝えられなかったとなり、後悔が見える。

上のように二句並べてみると、「言ひそびれ」の方が断然良いように感じるがどうだろうか。ま、いっか、ぐらいの「言いそびれ」の方が秋の淡海に深刻な重さをと与えないためだろう。

句集『天袋』(1998年)を開くとこの句の前後がなかなかすごい。

死ねばすぐ大むらさきともつれたく

露の身にして些かの紙の屑

生れたる数だけは死に秋の風

野菊道ところどころで我は死に

ま、いっか、なのかもしれないが、軽いわけではない。

そう言えば全句集に秋の湖の句はこの一句だけ。

何を言いそびれたのだろう。



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