2014-10-05

自由律俳句を読む 63 久光良一〔1〕 馬場古戸暢



自由律俳句を読む 63  久光良一1

馬場古戸暢


久光良一(ひさみつりょういち、1935-)は、山口の自由律俳句団体「周防一夜会」の代表である。インターネット上でも活動しており、様々な賞を受賞している。今回は、氏の第一句集『走り雨』(文學の森、2013)より数句を選んで鑑賞したい。

黙っていた口が黙って酒を飲んだ  久光良一

無口な男は、とことん無口なのだろう。作者もよく、黙っていた口に関心を抱いて観察したものである。

背かれた夜の真っ赤なトマトに塩ふる  同

背かれた思いを、真っ赤なトマトへ塩をふることで晴らせているのだろう。さぞかしかぶりつきがいがあるトマトだったに違いない。

どこまでも夏をころがっていった帽子だ  同

清楚な雰囲気の女性が、風でころがる麦わら帽子(なのだろうか)を追っている様を思い浮かべた。もくもくとした入道雲がまた、夏らしさを演出していたことだろう。

山けぶらせてやってくる走り雨の白い夏  同

句集の題名となった「走り雨」が詠み込まれている。山の近くに住んでいる人ならではの句だと思う。

まずしい暮らしの屋根に青空のせている  同

ぼろくなった屋根瓦と青空の組み合わせがよく浮かぶ句。第22回山頭火全国俳句大会「山頭火賞」受賞作品。

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