自由律俳句を読む 65 久保白船
馬場古戸暢
久保白船(くぼはくせん、1884-1941)は、『層雲』同人。山頭火らとともに、周防三羽ガラスと呼ばれた。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。
気ちがいたけるその家の青き竹藪 久保白船
「気ちがい」はやはり「キチガイ」なのだろうか。そうすると、これはその家の住民のことを指しているのか、それとも素直に竹藪のことを指しているのか。いずれにせよ、鬱蒼とした世界が広がっている。
旗をあぐればひらひらと空のいろ深く 同
空のいろは、青色か水色が赤色か黒色か。どのいろであったとしても、旗のひらひらは空によく似合うように思う。
蛙の声にうづもりてふかき夢なりし 同
夢の奥底で、ひたすらに蛙の声が聞こえてきているのだろう。あるいは、実は夢と現実の間の出来事であって、実際に蛙が鳴いているのかもしれない。
手の玩具として位牌もたせねばならぬ 同
代替品がなかったのか、気になる句。位牌の運命は、そして故人の気持ちは如何に。
つつじに黒い蝶のくるひるを髪といてゐる 同
窓の外のつつじへやってきた黒い蝶をみながら。女が髪をといている。作者がどこにいるのかわからないが、色気を感じる句。
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