2014-10-19

【週俳9月の俳句を読む】 俳句ショートショート  麻里伊

【週俳9月の俳句を読む】
俳句ショートショート

麻里伊



消印はきのふの銀座きりぎりす  森山いほこ

ポストから出したばかりの手紙には、昨日の消印がくっきりと。俳句的省略からすると、昨日銀座でなんらかの関わりで会っていた人とも取れる。内容には言及してなく「きのふの銀座」。これがなんとも意味深。「きりぎりす」が切羽詰まっている様で妙に落ち着かないのがいい!

秋茄子の皮を剥がせば渚色  森山いほこ

はて、渚の色とは?澄んでもいない濁ってもいない、波打ち際の砂の色なのか。はて、茄子の中身の色とは?我が家の今ある野菜を眺めてみると、馬鈴薯、玉葱、人参、大根…やっぱり茄子程に皮と中身の色の違いはない。焼けこげた紫紺の皮を剥いだ時、ちょっとした驚きがあったのだ。解っていることなんだけど今さらなんだけど、焼きたての煙とともに異色の出現が「渚」を運んで来た。秋だなあ〜。

人々は頭でっかち鳥渡る  中山宙虫

宇宙戦争、ロボットの時代になっても季語がついて来た。そうなるとアーサー・C・クラークより光瀬龍だ。アインシュタインの子孫がはびこり、頭でっかちになった地球人。だが人間以外の自然や生き物は原始よりそうは変わらない。鳥も季節が来ると渡り、秋刀魚は海に回遊、夕焼けは相変わらず綺麗だし、人の住めなくなった村には草木がはびこり森と化している。俳句ショートショート、面白かった!

黄落の増す多国籍料理店  岡田由季

日本料理をベースに組み合わせ「無国籍料理店」なるものが流行ったこともあるが、「多国籍料理」の呼び名の方が新しいのでは。似ているところもあるが、和食をベースに外国の材料、調理法を加えた「無国籍」、エスニックも含め多様な国の料理のを出す「多国籍」だろうと思うが、多くは同じ意味合いに混同されているように思える。料理は、私達人間同士の融合よりもっとスピードも速く親密である。真似され新しく構築され、日々新しい料理が生み出されて行く。

とある街角の多国籍料理店。客も多国籍ならば従業員も多国籍。その賑わいを呼び込むように、黄落がいよいよに深くなっていく。黄落の色合いに人種の肌の色合いを思った。


第388号2014年9月28日
中山宙虫 時間旅行記 10句 ≫読む
岡田由季 多国籍料理 10句 ≫読む
第387号 2014年9月21日
森山いほこ 昨日の銀座 10句 ≫読む


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