2015-03-08

自由律俳句を読む 83 小山貴子〔1〕馬場古戸暢


自由律俳句を読む 83
小山貴子〔1

馬場古戸暢


小山貴子(こやまたかこ、1951-)は、尾崎放哉の研究家として知られる、自由律俳人。1975年、層雲に入門。近年、『自由律俳句『層雲』百年に関する史的研究』(自費出版、2013年)を出版し、自由律俳句誌『青穂』を創刊するなど、ますます精力的な活動を展開している。以下では数句を選んで、鑑賞したい。


秋口の光る鋏で切ってあげます  小山貴子

先日韓国焼き肉店に行ってきたせいか、この「秋口の光る鋏」は生肉を切るものであったように思う。

固唾をのんで森の月蝕  同

森で月蝕を観察していたのだろう。現代日本において森に相当するところは、どこにあるのだろうか。一度赴いてみたい。

網膜に残ったものを整理する  同

なんらかの病気を網膜に患い、その摘出手術の様子を詠んだものか。それとも、思い出のことか。いずれにせよ、大事に至らないようにしなければならない。

売り子の声も小さく終着駅  同

終点らしく、この駅は小さいものだったのか。そうなれば売り子の声も小さくて十分だろうが、客が少ないためになかなか売れないのではないか。ここが何かの観光地を有する地であれば、売り子に頑張る余地はあろう。

俯いて低い靴音にいる  同

俯きながら歩いているところか。俯いているところに、低い靴音が近づいてきているのか。ホラーがはじまる予感がする。

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