〔今週号の表紙〕
第423号 見たものと写ったもの
西原天気
カメラというのは、見たものが見たようにはなかなか写りません。旅先などで「おお! なんと美しい景色だろう!」とカメラを向けてシャッターを押す。現像すると、なんか違う。
この葉っぱの写真は、むかし撮ったフィルムから出てきましたが、こんなもの、こんな景色を私は見た憶えがないし、きっとそのときも見ていない。
何かが写るということは、私が見たものを定着させ、いつまでも記憶(備忘録)として残すこととは少し違う。 そのときの自分の経験とは、一種のべつものとして、しかしながら経験と分かちがたく、〈写真そのもの〉として残ったり、失われたりするものらしい。それは人物が写ったスナップでも同じことだろうと思います。
この事情はなんかちょっと俳句に似ています。
ちなみに、当時、どのようにして撮ったか、実際、憶えていません。自然にはおそらく撮れない。光源をどこかに置いて、背景に黒いものを置いて、位置関係を調整して、というふうな手順は想像できるのですが、思い出せません。
●
週俳ではトップ写真を募集しています。詳細は≫こちら
0 comments:
コメントを投稿