【八田木枯の一句】
空罐と五月照応しつつ老い
西原天気
缶詰はプルトップが多くなり、缶切りの出番は少なくなりました。《鳥渡るこきこきこきと罐切れば》(秋元不死男)のシーンは日常から失われつつあります(そういうことはよくある)。
空罐と五月照応しつつ老い 八田木枯
この空罐は昔からあるキコキコと缶切りで蓋をあけた缶、それもアルミ缶ではなくスチール缶という気がします。
銀色に輝く(あるいは錆びた)空罐と五月の照応。
問題は「老い」です。老いるのは誰か?
作者ともとれるでしょうし(照応しているのも作者)、空罐と五月が老いていくともとれる。私は、空罐も五月も作者も、と解しました。
空罐が銀色あら鈍色に錆色に。
五月のかがやきは、何年経ってもかがやきのまま。けれども、それは経年のかがやき。老いていく作者の目を通せば、ということ。
掲句は『天袋』(1998年)より。
2015-05-17
【八田木枯の一句】空罐と五月照応しつつ老い 西原天気
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