何か書かれて 福田若之
出だしから吊られて夏の月うき世
名が鳥を仏法僧にして発たす
ハンカチと呼べばそう詩と呼べばそう
広い田に引用されてゆく早苗
古池が古び続ける梅雨、その音
肉を得たことば蛆の口が動く
霊長のくちびる忌まわしく螢
螢火がすでに言葉のなかに棲む
箱庭の作者が映り込む水面
蛾の思う蛾は蛾ではない鱗粉散り
読むことに伴うまばたきと西日
夕立の幹にべたつく手が触れる
病葉を語れば落ちてゆく言葉
しばらくは夕焼けのなか塔の麻痺
何も書かなければここに蚊もいない
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2015-06-28
15句作品テキスト 何か書かれて 福田若之
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