自由律俳句を読む 97
青木此君桜〔1〕
馬場古戸暢
青木此君桜(あおきしくんろう、1887-1968)は、福井出身の自由律俳人。層雲へ入るも、俳句は短律でなければならぬと主張し、層雲を離れて「新俳句」を主宰した。以下では数句を選び、鑑賞したい。
草におればあたたかくうしろ通つていく 青木此君桜
川沿いの土手に寝転んでいると、その後ろを人か牛か何かが通っていった様を詠んだものだろう。草原に寝転ぶという行動に憧れがあるが、実際に自分でしてみると、手持ち無沙汰ですぐに起き上がりたくなる。
つくろうて着るとて春がくる 同
五四五の韻律が、春らしい様子をよく描いているように感じる。あるいは、九三二で読んでもおもしろい。
牛のいかりに正しく牛の綱がある 同
綱は、脱走防止用ではなく、実はいかり用だったのであろう。実に正しい。
咲くとしつぼみべにさしている 同
鏡台の前で口紅をぬっている女性が、まずもって浮かんでくる。べにはとにかく色っぽいのである。
今以て座右にあつて一個の石塊 同
ここでの座右は、文字通り座っているところの右側のことだろう。どうでもよい石の塊を川辺からひろってきて幾十年、捨てるにもはや捨てれまい。
2015-06-14
自由律俳句を読む 97 青木此君桜〔1〕 馬場古戸暢
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿