竹岡一郎
進(スス)メ非時(トキジク)悲(ヒ)ノ霊(タマ)ダ
後篇:接吻一擲無智一擲惜しむべからず抱くまでは木琴聴いても正気が足りぬ億兆の新たなる終末に洗濯は素敵だ!
神在の鍾乳洞が俺を吐く
極細の鮫が毎日首都へ降る
漆黒たらんと白鳥のこころざし
開戦日不眠不休のハッカーら
不死の鮫なみだの海に鰭磨き
開戦日死の商人が美男子だ
鮫の背骨が折れてることは言はないで
開戦日全霊で猫抱いて坐す
一家戦没以来不死なる竈猫
島の遺骨の上の無恥なる我等へ鮫
海底は人魚鳴きあふ開戦日
開戦日発電所から鮫!鮫!鮫!
人参採り呉れたる友が敵国人
鮫の群より零戦が離脱せり
独居老人首都を悼むに雪降らす
霊として鮫は獲物を選ばない
鮫食つて鮫の気持ちの黙示録
ぐん軍はらひさげひん払下品として人魚冷ゆ
ねぢれ燃え地核へ進む鮫一塊
クリスマス可愛さ川獺真つ赤な噓
思春期の喉は斉しく鮫の歯痕
有刺鉄線より聖骸へ凍みる戦史
産めよ呪へよ鮫よ造兵廠すてき
空爆の屍が飾る大聖樹
弾倉に着ぶくれてゐる女の子
まつろはず鮫の穿てる舌なれば
鶴凍てて難民の子へ翼貸す
悪党の僕に聖菓を強いるなよ
主権即ち人魚に在れば吹雪く国会
勇魚らが空母大破しつつ回遊
2015-11-15
10句作品テキスト 竹岡一郎 進メ非時悲ノ霊ダ 後篇
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