2016-02-07

イメージのスピード感 豊里友行『地球の音符』の一句 西原天気

イメージのスピード感
豊里友行地球の音符』の一句

西原天気


それっ蟹が穴掘る月と太陽(ティダ)の笛  豊里友行

ティダは太陽の沖縄読み(だと思う。詳しくは調べていない)。

浜と天空と、垂直の構図は俳句ではめずらしいものではないが、際立って鮮明に、強烈な映像美をもっているのは、やはり亜熱帯という舞台あってこそだろうが、句そのもののイメージ塑像の成果でも、もちろんある。

太陽と月が並列される豪華に「ティダ」というローカリティの要素が加わり、さらに「笛」という音がかぶせられる。

導入の「それっ」の勢いに、以降のスピード感が続く。

俳句は調べだ、と信じる自分に、この句は、鳴って鳴ってしたかがないほど、よく鳴る。「鳴る」とは韻律の問題だけではない。意味とイメージと韻律によって、句は、鳴るのだ。


豊里友行句集『地球の音符』(2015年12月20日/沖縄書房/1,080円)



1 comments:

豊里友行 さんのコメント...

西原天気さま

ご鑑賞ありがとうございます。
「太陽」(ティダ)は、沖縄語(ウチナー口とも言う)です。
私も俳句の韻律を大切にしています。
口の中で繰り返し言葉を踊らせて推敲もします。
これからもどうかよろしくお願い致します。