イメージのスピード感
豊里友行『地球の音符』の一句
西原天気
それっ蟹が穴掘る月と太陽(ティダ)の笛 豊里友行
ティダは太陽の沖縄読み(だと思う。詳しくは調べていない)。
浜と天空と、垂直の構図は俳句ではめずらしいものではないが、際立って鮮明に、強烈な映像美をもっているのは、やはり亜熱帯という舞台あってこそだろうが、句そのもののイメージ塑像の成果でも、もちろんある。
太陽と月が並列される豪華に「ティダ」というローカリティの要素が加わり、さらに「笛」という音がかぶせられる。
導入の「それっ」の勢いに、以降のスピード感が続く。
俳句は調べだ、と信じる自分に、この句は、鳴って鳴ってしたかがないほど、よく鳴る。「鳴る」とは韻律の問題だけではない。意味とイメージと韻律によって、句は、鳴るのだ。
豊里友行句集『地球の音符』(2015年12月20日/沖縄書房/1,080円)
2016-02-07
イメージのスピード感 豊里友行『地球の音符』の一句 西原天気
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1 comments:
西原天気さま
ご鑑賞ありがとうございます。
「太陽」(ティダ)は、沖縄語(ウチナー口とも言う)です。
私も俳句の韻律を大切にしています。
口の中で繰り返し言葉を踊らせて推敲もします。
これからもどうかよろしくお願い致します。
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