【句集を読む】
食べものという恵み
須原和男『五風十雨』の一句
西原天気
納豆のために葱あり朝日あり 須原和男
なんて美味しそう! 朝日に輝くのは、混ぜてからでもいいけれど、混ぜる前。納豆の一粒一粒の表面がつややかなうちがいい。葱もよく見えるし。
ほかにも、「美味しそうな」句がいくつか。
天に白雲てのひらに櫻餅 同
(白雲に「しらくも」のルビ)
食べものというのは、つまりは天の恵みという考え方があって、だとするなら、「いただきます」「ごちそうさま」は母親やお百姓さんにだけでなく、むしろ天に向かって言ってることにもなる。
春の月粥のやうなる雲を出て 同
雲が美味しそうに思えるのは、倒錯だけれど。
割りたての箸を汚しぬ鮎の腸 同
(腸に「わた」のルビ)
鮎よりもむしろ割り箸の木の匂いがしてくる句。
2016-07-03
【句集を読む】食べものという恵み 須原和男『五風十雨』の一句 西原天気
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