選句と作者一覧【電】
〔席題【電】の高点句〕
手に金魚 なんか電気の匂ひがする 生駒大祐
◯マリオ◯ハードエッジ◯なかはられいこ◯曽根主水◯かんな◯加納燕◯鈴木茂雄◯犬山入鹿◯中村遥◯照屋眞理子◯石原明◯瀬戸正洋◯菊田一平◯Y音絵◯きゅういち◯一実◯青柳飛
■縁日で捉えた金魚だろうか。旧仮名を使うならば「なんか」ではなく「なぜか」の方がベターかな、とは思ったが、「電気の匂ひ」が予測しなkった展開なので良いと思った。(青柳飛)
■感覚的な感触。「金魚」と「電気の匂ひ」は関係ないようで面白い出会い方。(一実)
■「電気」に「匂い」がある!でもなんかわかる気が。「手に金魚」のアンニュイさがグッジョブ。(きゅういち)
■ぶっきらぼうな文体ですが、「kiNgyo」→「naNka」→「deNki」と続くリズムが巧みで、下五の字余りに余情があります。「電気の匂ひ」という意外な措辞にも惹かれました。(Y音絵)
■そうかぁ、あの粘っこさは電気の匂い!(菊田一平)
■なんか、ホントにそんな気がする。この金魚死ぬんじゃないかな。(瀬戸正洋)
■なんかエレキテルを溜め込んだサイボーグの金魚でしょうか。(石原明)
■正解かどうか分からないが、昔々の夜店のアセチレン灯を思い出してしまった。しゃべり言葉「なんか」を採用したセンスの良さ、「匂ひがする」と、助詞を入れた方が音楽性がよいと承知しているのも心憎い。(照屋眞理子)
■電気の匂いとはどんな匂いなのだろう。電気に匂いなんてあるのだろうか。金魚には確かに独特の匂いがある。あれが電気の匂いなのか。(中村遥)
■確かに鯉は鉄の匂いがするな(犬山入鹿)
■腹部にグラデーションの掛かった赤い「金魚」、いかにも「電気の匂いがする」色だ。手のひらに乗せるとさらにその感じを深くしたのだろう。(鈴木茂雄)
■おもちゃっぽいところこそが金魚らしさなのかも。そしてとにかく早く水に戻してあげてほしい。(加納燕)
■感電?漏電?金魚の威力おそるべし。(かんな)
■感覚としてよく解る一方で、ディック的な現実崩壊感の萌芽のようでもあり。(曽根主水)
■「なんか」がキュートで好きでした。電気ってけっこうなまぐさいと思うんですよ、なんか。(なかはられいこ)
■色も電気の色か(ハードエッジ)
■味は知っているけど、匂いがわからなかった。金魚だったのね(マリオ)
江ノ電を止めて祭の通りけり 照屋眞理子
◯冬魚◯ハードエッジ◯曽根主水◯渕上信子◯村田篠◯笠井亞子◯鈴木茂雄◯杉太◯黒田珪◯かよ◯菊田一平◯小久保佳世子◯青島玄武◯西村小市◯青木ともじ
■実際そうなのかもと思わせる説得力と、祭の神輿なり行列なりが通り過ぎるまでの時間の切り取り方がうまい。(青木ともじ)
■祭は非日常、その高揚した気分が伝わってくる。江ノ電だって止めてしまうのだ。(西村小市)
■「江ノ電」が実にうまく利いている。人出はそこまで多くないけど、一応は首都圏のお祭りの雰囲気。「神田川祭りの中を流れけり 久保田万太郎」のパロディも感じられて微笑ましい。(青島玄武)
■ローカルでしかも有名な江ノ電の名称がハマっています。(小久保佳世子)
■江ノ電がいいなあ。(菊田一平)
■電車とは比べものにならないほど歴史のある祭りの存在感と潮の香りが漂う句。(かよ)
■小さな町の小さな電車を小さな祭りが止めて横断する。ほのぼのとしてホッとする一句。(黒田珪)
■祭りの細事には一切触れず、本来なら山車や人が通るところを「祭り」そのものを通したところに、いかにも祭りらしさといったものが表現されている。(鈴木茂雄)
■江ノ電だからいいんでしょうね。神輿の先に海が見え。(笠井亞子)
■御輿も含めて「祭」という賑やかなかたまり。(村田篠)
■「江ノ電」にリアリティを感じます。(渕上信子)
■重力や電磁気力や強い力や弱い力の他に、祭力というのもある気がします。(曽根主水)
■江ノ電なら止ってくれます(ハードエッジ)
■「祭」とあるので、神輿だけでなく後ろに続く人々の姿も見えます。暮らしのすぐそばを走る「江ノ電」らしい景。(冬魚)
■先住権を主張しているのは祭だ!(杉太)
●
いっせいに電球切れる茄子畑 鈴木茂雄
◯信治◯羽吟◯犬山入鹿◯佐藤日田路◯鯨◯青木ともじ
■温室か、あるいは畑の周囲の明りだろうか。たしかにああいう電気は一括管理でいっせいに消えるのだろうなあと妙な納得をした。(青木ともじ)
■電球茄子がある、茄子型電球がある、電球と茄子の相互補完関係。(鯨)
■日盛りに雲がわき出て昏くなる。茄子畑の茄子を電球と見立てた。(佐藤日田路)
■胡瓜畑では電球はきれない面白さ(犬山入鹿)
■電球と茄子の形が少し似ている。電気が切れて茄子がなんとなく落ち着いたような感じがする。(羽吟)
■いいですね。要は茄子って黒電球みたいに見えるなということなんですけど。(信治)
さるすべり海の見えない長電話 高橋洋子
◯西川火尖◯マリオ◯犬山入鹿◯由季
■暑さ、海が見えないという焦燥感、長電話の内容も込み入っていそうです。(由季)
■さるすべりでなくても長電話は辛い(犬山入鹿)
■自分には縁のない3点セット。共感はないけど気になる(マリオ)
■まるで海が見えることが普通であるような謂いが面白かったです。百日紅の明るさも奇妙な印象を強めているように思いました。(西川火尖)
サングラス江ノ電けふも満員で 鈴木不意
ででむしや家出のそおっと終電車 阪野基道
◯石田遊起◯犬山入鹿
■家出はいいな。懐かしい(犬山入鹿)
■遊び過ぎたのもいい思い出。ででむしのゆっくり感がいい。。(石田遊起)
びりびりと雷様の尻尾かな ハードエッジ
フランケンシュタイン首の電極抜く晩夏 冬魚
◯加納燕◯野口裕◯竹井紫乙◯クズウジュンイチ◯村嶋正浩◯由季◯阪野基道◯鯨
■フランケンシュタインという存在がまず晩夏。首にある原動力を抜いたために鈍化、晩夏が強まった。(鯨)
■フランケンシュタインの青白い無機質な顔が目の前にちらつく。彼はふと自分たるものに気づき、薄目をあけて、稲光る電極を表情もなく抜き取り、世間に自立しようと出立する。友なく晩夏の淋しさの中で。(阪野基道)
■コミカルで、少し物悲しいフランケン。晩夏ならなおさらです。(由季)
■「抜く」に込められた意味には、様々な想像が膨らむ。人間以上に人間である怪物を持ち出したのが適切で、精一杯生きた季節を突然終わらせる。命を奪う。抜いた人との関係は、よき関係だったのかどうか死刑、殺害、安楽死、情死、何も語っていない。何事かがあって夏が終わる。終わらせる。辛い死だ。生き物の死はこんなものだ。(村嶋正浩)
■首のあの杭は電極なのか知らないが、衝撃のある句。(クズウジュンイチ)
■電極抜いたらぺしゃんこになるとか? 誰が抜くのか、も考えると面白い。(竹井紫乙)
■稲妻とともにフランケンシュタイン死(野口裕)
■自由になったフランケンシュタインの、その先の悲劇。(加納燕)
ほろほろと電気クラゲを閉じ込める かんな
◯マリオ◯青柳飛
■「ほろほろ」がいい。(青柳飛)
■オノマトペが効いている。クラゲに出会ったらこの呪文をとなえる(マリオ)
みんみんの配電盤に来ては鳴く 菊田一平
◯笠井亞子◯守屋明俊◯由季◯黒田珪◯あまね◯幸市郎 ◯彩楓
■暑い盛り「配電盤」は大忙し、アルソックの山下さんは鳴くみんみんを探して今日も大汗をかいています。(あまね)
■いかにもありそうでこれ以上ないくらいにリアリティーを感じる句。蝉の鳴き声の鬱陶しさのイメージとしては満点。(黒田珪)
■そこが気に入っているのでしょうね。リズムがいいと思いました。(由季)
■カラスがテレビアンテナで鳴く句を作ったことがあるが、配電盤でみんみん蝉が繁く鳴いた方がよほど大音響がする。(守屋明俊)
■みんみんと配電盤の相性よし。来て鳴かなくてもいいけど。(笠井亞子)
■そういえば、配電盤の前でよく蝉の死骸を見る様な気がします。(幸市郎)
■そういえば、配電盤の前でよく蝉の死骸を見る様な気がします。(幸市郎)
襖から逐電中の草いきれ 彰子
◯笠井亞子◯鯨
■逐電は稲妻を追うことだと思い返させる。襖のなかの一椿事。(鯨)
■襖絵の草ぼうぼう? いったいどこへ。(笠井亞子)
夏の夜が電流爆破デスマッチ クズウジュンイチ
◯近恵◯赤野四羽
■とにかく勢いがあってよい。ジメッとした夏の夜は冷えたビールをやりながらプロレスでも観てスカッとしたいぜ。(赤野四羽)
■笑った。夏の夜ってそういう感じと言われればそう思えてくる(近恵)
回天や雲の峰より放電す 赤野四羽
◯冬魚
■「回天」は人間魚雷ですね。「放電」が魚雷の爆発、あるいは爆死した兵士の怒りを想起させます。ぐっときました。(冬魚)
缶ビール0四つ点く電気釜 小林幹彦
◯西川火尖◯トオイダイスケ◯きゅういち◯一実
■現代的な風景。日の境目を「電気釜」で感じるドライな感覚がいい。(一実)
■句には書かれていない蒸し暑さを追体験するような。(きゅういち)
■新品か、逆に古くて使っていなかった電気釜か(現在時刻を合わせていない)。とにかく台所の暗さや蒸した空気を思った(トオイダイスケ)
■炊飯器の初期設定を済ませていない生活の慌ただしさ、渇いた様子が感じ取れました。そうなると一息つくためのビールも缶以外ありえないわけで。(西川火尖)
亀回る回って溜めるエレキテル きゅういち
◯石原明
■夜店で買ってきた亀をとりあえず洗面器に水を張って入れると縁を回って泳いでいましたが電気を溜めていたとは知りませんでした。(石原明)
銀漢や船長室に鳴る電話 中村 遥
◯うさぎ◯羽吟◯かんな◯鈴木茂雄◯竹井紫乙◯クズウジュンイチ◯鈴木不意◯由季◯佐藤日田路◯林昭太郎◯鯨◯西村小市
■物語を感じた。夜の船長室で鳴る電話は何を伝えるものなのだろう。(西村小市)
■文明社会と辺境とのかろうじての繋がりが電話の音だろう。目的地はモビィ・ディック或いはニュー佐渡島。(鯨)
■ドラマチックな句である。「銀漢」が実に佳い味を出している。(林昭太郎)
■天の川きらめく夜の航路の電話の向こうとこちら。物語が無限に広がる。個人的特選句。(佐藤日田路)
■船にかかってくる電話はドラマを感じさせます。(由季)
■航海中の一コマを想う。どんな内容の電話での会話だったのだろう。何かドラマが始まりそうだ。(鈴木不意)
■遠洋マグロ漁船であろうか。真っ黒な海の上、空いっぱいの銀漢が輝く中に突如鳴る電話は不穏である。(クズウジュンイチ)
■キラキラしている句で魅かれました。なんだかいけない電話のような気もします。ついでに、二度と家には帰れないような予感も。(竹井紫乙)
■銀河系惑星間を航行中の宇宙船、だが、なぜか船長室の机の上にあるのは昭和時代の黒電話。どこから掛かっているのだろう。船長は不在のようだが、、、(鈴木茂雄)
■これは古き良き電話であってほしい。あるいは彼の世からの電話かもしれない。いいんです、甘くても。(かんな)
■空→海→陸地からの連絡と気持ちが移り、一気に現実に引き戻されるテンポが見事だ。(羽吟)
■銀河の下のクルーズはロマンチック。電話の音も美しげだけれど、ちょっと不穏さも秘めているところがいいです。(うさぎ)
空蝉に電柱かよ良いな背中 曽根主水
◯ハードエッジ
■空蝉の背中よ背中縦に裂け ハードエッジ。ひるがほに電流かよひゐはせぬか 三橋鷹女(ハードエッジ)
空蟬は電話のをとを運びをり 宮本佳世乃
◯彰子◯きゅういち
■「空蝉」が「電話の音を運ぶ」という発想に度肝を抜かれました。(きゅういち)
■空蝉の色、触感が黒電話の響きと共鳴しました。(彰子)
原爆忌危篤の叔父より電波の来 瓦すずめ
◯あほうどり
■8月6日に臨場感があり外せない。(あほうどり)
言葉から電子飛び出す涼しさよ 佐藤日田路
◯西川火尖◯曽根主水◯宮本佳世乃◯酒井匠
■未来派(ないし『未来派野郎』)のことを思ったりしました。言われてみれば言葉から電子が飛び出す(感じがする)ことは確かにありそうで、且つ、涼しさを感じそうです。(酒井匠)
■全体から硬質な音が出ている感じがしました(宮本佳世乃)
■『ああ電子戦隊デンジマン』には無くて(名曲ですが)、例えばボーカロイドの歌声にある涼しさ。(曽根主水)
■セオリーかもしれませんが、涼しそうで涼しくない、でもちょっと涼しいかもしれないものを涼しいと言うと涼しくなりますね。(西川火尖)
降灰の街行く電話夾竹桃 彩楓
終電の曳きて行きたる夏の月 黒田珪
◯なかはられいこ◯石田遊起◯笠井亞子◯あほうどり◯由季◯彰子◯小久保佳世子
■夏の月を従えて今日の最終電車が過ぎてゆく景には一抹の寂しさがあります。(小久保佳世子)
■終電の酔客である私、夏の月が曳づってくれている。(彰子)
■大げさかな、少し甘いかな、などと思いながらも曳きて行きたるという表現に魅力を感じました。(由季)
■情景がきれいに浮かぶ。既視感ありかもしれないがやはりよい。(あほうどり)
■うしろ姿がボーっと浮かぶ、いい夜景。(笠井亞子)
■夏の月だから楽しみの残像も曳く。(石田遊起)
■イメージは影絵でした。ちょっと妖しくて乱歩の世界みたい。惹かれます。(なかはられいこ)
充電の切れしシェーバー夏休み 幸市郎
上くちびると下くちびるに静電気 なかはられいこ
◯怜◯瀬戸正洋
■キスをしているんだろう。キスをして静電気は起きないだろうが、こころにもからだにも静かな電気が。うらやましい限りだ。(瀬戸正洋)
■やっかいですな、感がいい。(怜)
青蔦の体のどこに電源が 近恵
◯青島玄武
■「青蔦の体」で古い洋館を思い出した。スポット生徒を浴びている様子でなくて、真昼間の威容を湛えた姿を描写したものだと感じた。(青島玄武)
蝉時雨電線しとしと濡れており あまね
◯中村遥
■蝉時雨と濡れた電線の関わりが面白い。 夕立のあとに泣き出した蝉の声と解しては全く面白くない。(中村遥)
帯電す向日葵びっしり枯れ尽くし 笠井亞子
◯近恵◯憲子◯あまね◯羽田英晴
■種がペレット燃料のようでもある。(羽田英晴)
■言わずもがな、「帯電」しちゃった訳ですね。「向日葵」は「枯れ」ちゃった。まさか、咲いてる時には「枯れ」るとは想像だにしていなかった。だけど、「帯電」したから「枯れ」ちゃった。そういうこと。(あまね)
■「帯電す」に納得してしまう。(憲子)
■なにか不吉な感じがする(近恵)
帯電のからだ気怠し扇風機 一実
◯青砥和子◯鈴木不意
■「帯電」がよかったのかどうか。扇風機の風にに長く当たっているとこうした怠さになってしまう。扇風機を動かす電流が人間に移っていったかのよう。(鈴木不意)
■「帯電のからだ」の表現で夏の暑さはもちろん狂おしい心を持て余している様も想像してしまう。その気怠さは扇風機でさらに増幅されていくように思います。(青砥和子)
端居して電池残量急に減る 由季
◯クズウジュンイチ◯高橋洋子◯彰子◯小久保佳世子
■若者に端居は似合わない感じ。電池残量減少とは老化現象のようでもあります。(小久保佳世子)
■「急に減る」現実に引き戻されたのが「電池残量」細やかな感性(彰子)
■急に減る?あら。もしかしてアンドロイドだったのかしら。(高橋洋子)
■ぼーっとしていると、思いがけず長い時間が経っていた。電池残量が急に減ったのではなく。意味の逆転が面白い。(クズウジュンイチ)
竹婦人電池仕掛けの細き声 マリオ
◯きゅういち
■「婦人」からの「細き声」をオチとすればなんともエロチック。「電池仕掛け」がそれを可能にしたのかなと(きゅういち)
逐電の妻から便り桐一葉 鯨
◯犬山入鹿◯守屋明俊◯阪野基道
■逐電とは少々古い言葉だから、かなり年配の夫婦か。行方知れずの理由は、些細なことかもしれぬ。桐の大きな葉がひとひら落ちることによって、わだかまりが消えていったのかもしれない。(阪野基道)
■行方をくらましている妻から便りが来たというが、これは願望であろう。散る一葉に妻を偲んでいる哀しい句。(守屋明俊)
■不幸と孤独が広がっていく感じが好き(犬山入鹿)
停電が百年ゲジゲジしかいない 芳野ヒロユキ
◯信治◯加納燕◯赤野四羽◯青柳飛
■トランプが大統領になってしまったら、アメリカはゲジゲジしか住まない街になってしまうのかも。。。(青柳飛)
■この勢いも好きである。百年も停電すれば現生人類はあっという間に頂点から転げ落ちる。あとはゴキブリの天敵、ゲジゲジの天下である。(赤野四羽)
■昼間でもゲジゲジしかいないのか。そんな世界に生きたくないけれど大丈夫だった。ゲジゲジしかいない。(加納燕)
■人類以後、ってことですね。(信治)
停電で金魚の代り刺身買ふ 渕上信子
底紅や留守番電話の受話器持ち うさぎ
◯野口裕
■花の名が効く。(野口裕)
電気つけて見るかぶとむしめんどくさい 加納燕
◯なかはられいこ◯曽根主水◯渕上信子◯高橋洋子◯村嶋正浩◯沖らくだ◯瀬戸正洋
■「その通り」だと私は答える。(瀬戸正洋)
■読んでいるうちに、めんどくさいのはカブトムシの方という気がしてきた。「うわまた見に来た!」みたいな。(沖らくだ)
■見たくもないかぶとむしを見ている、それも夜の暗闇の中で見せられている。思わず、めんどくせえなあ、と電気を付けて見る。夏休みの家庭の風景である。めんどくさい、が的確で高度な表現だ。(村嶋正浩)
■かぶとむしってかなりマジカル。めんどくさい!とは。大見栄きった。(高橋洋子)
■めんどくさいと思いながら見ている、なぜか気になる。(渕上信子)
■用語の投げやりっぷりにもひらがな流しにもやる気ゼロ。いかにも夏の倦怠ですね。(曽根主水)
■意味わかんないんですけど、めんどくさいものって人によってちがいますよね。「かぶとむし」で切ってよむほうがすき。(なかはられいこ)
電源オンオフオンオフオン夏惜しむ 村嶋正浩
◯芳野ヒロユキ◯きゅういち
■「オンオフオンオフ」で「オン」。そりゃ「惜しんで」ますわ「夏」(きゅういち)
■リズムもいいし、思い出のオンと現実のオフ感が季語によく表れている。
電源を切るのを忘れ日雷 石田遊起
◯芳野ヒロユキ
■季語の様に、最近突然あっと思うことが多く、この句のとおり電源の切り忘れです。(芳野ヒロユキ)
電飾が延命を乞ふ夜店かな 青島玄武
電飾の昼の点滅水を打つ 西川火尖
◯冬魚◯宮本佳世乃◯鈴木不意◯トオイダイスケ◯Y音絵◯一実
■昼の繁華街の侘しさ。夜の仕事の人々の昼の生活が感じられる。(一実)
■炎昼を点滅する電飾の苦しさと、炎昼を生きる人間の苦しさとが重なり、「つ」の脚韻も相まって、「水を打つ」という営為の力強さを思いました。(Y音絵)
■電飾と水の細かな眩しさが、よく晴れた昼の眩しさのなかでよりきらめいてきれい(トオイダイスケ)
■近所のキャバクラやパチンコ屋なんかはこんな感じ。従業員が丁寧に水を打っているとこなんかを目撃することがある。けっこうリアルだ。(鈴木不意)
■電飾がそこにあって、昼「が」点滅しているしているのであれば面白いと思いました(宮本佳世乃)
■「電飾」の「昼の点滅」にはどこか場末の匂いがします。でも、打水をする柔らかな気遣いもある。ミスマッチな景がリアル。(冬魚)
電線に去年の凧の胡瓜揉み 羽田英晴
◯生駒大祐◯阪野基道
■電線に掛かった糸が風になびいているのは何ともじれったいことだ。だれも取り外すことなどできやしない。そうこうしているうちに半年もたって、まだ手つかずのままだ。(阪野基道)
■「凧の胡瓜」の部分の繋ぎがよいです。(生駒大祐)
電線に雀やサンバカーニバル 酒井匠
◯加納燕◯憲子◯瓦すずめ◯光明
■リオ・オリンピック、電線の雀が踊っています。(光明)
■この場合は「や」を「の」ないしは「が」と同じ意味で使っているのでしょうか。それとも「や」で切れているのでしょうか。雀の群れをサンバカーニバルに例えているのか、サンバカーニバルの上にすずめが集っているのか…。(瓦すずめ)
■電線マンを思い出し、採ってしまった。(憲子)
■夏祭りの商店街を練り歩くサンバカーニバルの唐突感。伊東四朗へのオマージュとも。(加納燕)
電線のつなぐ家々大夕焼 林昭太郎
◯うさぎ◯加納燕◯守屋明俊◯鈴木不意◯かよ◯沖らくだ◯吉野ふく
■懐かしい昭和の風景。大夕焼に気持ちが穏やかになってゆく。(吉野ふく)
■夕焼け空と建物のシルエット。家と家は込み入っているとしても、ちょっと離れているとしても、電線がずっとつながっているのが、シルエットだからこそ分かる。(沖らくだ)
■夕焼けのなかの影絵のような家々。そこで人々がそれぞれ営んでいる暮らしが、電線で集められているようにもみえる。街の一面を切り取った句。(かよ)
■住宅街の夕焼空を見上げるとこんなふうですね。景色が見えます。(鈴木不意)
■そう言えば家と家は電線で繋げられているんだ。大夕焼がその家々のシルエットを美しく見せる。三丁目の夕日的友好世界。(守屋明俊)
■それぞれのようでいて、様々なラインで繋がっている。夕焼けの後にいつもあかりは灯るのか。百年停電しっぱなしとかは困る。(加納燕)
■今はほとんど見なくなった光景ですね。夕焼が郷愁を誘います。(うさぎ)
電卓や忽微繊沙という位 怜
◯青砥和子
■「忽微繊沙という位」が面白い。それを電卓に求められても困ります(青砥和子)
電柱に生まれて蟬を鳴かせけり 守屋明俊
◯なかはられいこ◯燕加納燕◯渕上信子◯あほうどり◯憲子◯由季◯怜◯佐藤日田路
■くすぐったいが、みんな見ている。まあ、ゆっくりして行けよ。(佐藤日田路)
■存在理由を絞っておもしろくも哀しい。(怜)
■電柱が無機物なところに何故か切なさを感じます。(由季)
■動けないけど、いいこともあります。(憲子)
■電柱には?を鳴かせる使命があるのだ。(あほうどり)
■その点、電柱は枯木より幸せだと思う。(渕上信子)
■電柱として意識があったなら、今年は何匹蝉が来た、などと数えてしまうのだろう。(加納燕)
■最近はコンクリのしか見かけないので、木の電柱っていうだけで抱きつきたくなります。鉄塔も給水塔も電柱もえらいなあと、しみじみ思います。(なかはられいこ)
電柱の傾いてゐる溽暑かな 杉太
◯青砥和子◯竹井紫乙◯鈴木不意◯石鎚優◯林昭太郎
■あれは確かに暑さを倍増させますよね。(林昭太郎)
■電柱が罪を犯し、神から罰として、文明を成り立たせる機能の一つを永久に担うよう命じられた何かの生き物に見え、疲れはてて倒れそうに見えることがある。この句からもそんな思いが感受される。(石鎚優)
■この電柱夏に限らず傾いているのだけれど、辱暑で俄然存在感が出ました。シンプルで一番好きな句でした。(鈴木不意)
■気温が35度を過ぎるとこういう気分。世界が溶ける。溽暑って、大阪の夏にぴったりの言葉です。(竹井紫乙)
■溽暑とは電柱が傾くほどの暑さなんですね。もしかして 電柱ではなく暑さに負けた作者が傾いているのかも。(青砥和子)
電動珈琲ミル一閃す夏の雲 上田信治
◯野口裕◯酒井匠
■キラリ。とにかく格好良かったです。(酒井匠)
■雲が巨大なドリップコーヒーとなる。(野口裕)
電話ごし同じ花火を見てをりぬ 青木ともじ
◯杉太◯瓦すずめ◯彰子◯石鎚優◯林昭太郎◯きゅういち◯西村小市
■電話で話している二人が離れた場所から同じ花火を見ている。耳と眼で受けとめるものをとてもうまく表現した。(西村小市)
■隣同士にいるカップルがいてラインをやり合うという昨今、「電話ごし」とは言え、「同じ花火」とは言え、その距離感に思いを馳せてしまう。となれば作者の術中か(きゅういち)
■通話の相手も同じ花火を反対側から見つつ会話しているのだ。「虹」でも行けるところが弱みか?(林昭太郎)
■それほど遠く離れた所にいるのではない二人が電話で別れ話か、プロポーズか、故郷の近況か---話し合っている。その遠景に花火が上がっており、二人ともその花火を見ながら話している。二人の間柄や話の内容は読者の鑑賞に委ねられている。(石鎚優)
■このような感覚はつい最近も・・・はるか向こうの向こうとの関係性。(彰子)
■ロマンチックですね。電話の向こうからも現実の花火の音に一瞬遅れて花火の音が聞こえるのでしょう。(瓦すずめ)
■携帯か糸電話ですかね。じつは二人は隣り合わせで花火を見ているのでした。(杉太)
電話すると言つた翌日蛇と化す 青柳 飛
東電の試験に落ちて昇竜に あほうどり
桃色の夏着電気の検針員 憲子
◯高橋洋子
■針を検査する人が桃色?林家パー子でてきそう。(高橋洋子)
豆電車ビール畑を突っ走る 吉野ふく
◯守屋明俊◯光明◯幸市郎
■強い勢いを感じました、枝豆を連想させる豆電車!(光明)
■瓶ビールか缶ビールか、とにかくそれが畑になるほど林立している。豆電車の登場で俄然、箱庭的家庭が完成。(守屋明俊)
■ビール畑って?色々想像が膨らむ句ですね。(幸市郎)
■ビール畑って?色々想像が膨らむ句ですね。(幸市郎)
動きだす電車つられる夏帽子 かよ
虹消えて虹より遠き電池かな Y音絵
◯なかはられいこ◯宮本佳世乃◯生駒大祐◯沖らくだ◯酒井匠
■204句で一番わかりませんでした。びっくりしていただきました。(酒井匠)
■虹より遠い電池。分かりません。電池が虹をつくっている……?分かんないけど好き。(沖らくだ)
■電池がちゃんと聞いていて良いと思います。(生駒大祐)
■大切な人とつながるときの電池なんだろうと(宮本佳世乃)
■この構文には見覚えがあるような気はします。気はしますが、虹と電池の取り合わせが好きでした。(なかはられいこ)
入道雲東電本社包囲さる 西村小市
白い夏野へ我が電飾の車椅子 石原 明
◯うさぎ◯近恵◯クズウジュンイチ◯中村遥◯村嶋正浩◯小久保佳世子◯Y音絵
■窓秋の句を踏まえているのでしょうか。鮮やかな残酷さと意志の強さを感じました。(Y音絵)
■白い夏野は臨死を思わせますがそこをキラキラゆく車椅子、終末のゴージャスが描かれていると思いました。(小久保佳世子)
■「電装」が見事である。それも夏野へである。そこに車椅子のひとの高らかな心意気が見える。夏野も白い場所で、緑の草いきれのある場所ではく、電装が輝いて見える白い場所なのだ。われここにあり、と。(村嶋正浩)
■「頭の中で白い夏野となってゐる」を思わす。この車椅子の向かう夏野も頭の中の夏野なのか。(中村遥)
■実在しないであろう「電飾の車椅子」のなんという煌びやかさ。窓秋の「白い夏野」を超えているとさえ思う。文句なし特選。(クズウジュンイチ)
■白い夏野も電飾の車椅子も、映画をみているみたい(近恵)
■電飾の車椅子!高屋窓秋もびっくりのインパクトに平伏しました。(うさぎ)
白無垢脱ぎ冷房の席に電報 半田羽吟
◯石田遊起
■すこし遅れての電報が喜びもまたふくらみ冷房も心地よい。(石田遊起)
半夏生ツバメ一家で電線に 光明
半夏生電子タバコを咥へけり 瀬戸正洋
◯青砥和子◯竹井紫乙◯石原明
■電子タバコという中途半端なものが効いていると思います。(石原明)
■電子タバコは試したことはないのですが、中途半端なシロモノだなあと不審に思っていて半夏生の妙な感じとの取り合わせがクール。(竹井紫乙)
■蛸ではなく電子タバコを咥えているとしたことが気に入りました。新しい習慣ですね。(青砥和子)
晩夏の書序章末尾に逐電と 野口裕
◯青砥和子
■序章から「逐電」と書いてあるのですから晩夏の書とはいったい・・・?と想像してしまいます。(青砥和子)
風死して終電車にはキスマーク 竹井紫乙
風鈴や電気クラゲがぶらさがる 犬山入鹿
◯あほうどり◯瀬戸正洋◯青柳飛
■シュールで楽しい。クラゲが干からびてしまってたらちょっと怖いけれど、一瞬飛びつき、風鈴をちと鳴らし、クラゲは海へ戻ったとでもしておこう!(青柳飛)
■電気クラゲのぶらさがっていない風鈴は風鈴とは呼ばないのである。(瀬戸正洋)
■風鈴と電気クラゲの取り合わせがばっちり、電力自由化とも読める。(あほうどり)
噴水の電源切るやただの水 小久保佳世子
◯かよ◯青木ともじ
■下五、そこまで言っては身も蓋もないだろうというところまで言い切ったところが面白い。(青木ともじ)
■噴水を演じきってただの水にもどる。淡々とした清々しさ。山口百恵さんのよう。(かよ)
放電によろけて絡みつく裸身 青砥和子
◯酒井匠
■B級ヒーローものの拷問シーンを思いました。(スターウォーズ好き的としては、パルパティーン×EP6(ジャバ編)のレイアの薄い本?とも思いました。)(酒井匠)
夜濯ぎの空のどこかに発電所 村田 篠
◯かんな◯憲子◯村嶋正浩◯沖らくだ◯羽田英晴
■遠雷のあの辺りか。(羽田英晴)
■「空のどこか」、リアル発電所じゃなく遠くの雲の中に見える雷のイメージ。そんな呑気な句意ではないのかもしれないが、脳内で勝手にファンタジー読みしてしまいました。(沖らくだ)
■夜濯ぎをしている時間は、今日と明日のはざ間である。空も明日の準備をしている時間だ。変電所はその時間の切り替えている場所に違いない。何処にあるのか分からないが、ひしひしと確実にあると思われる。それが夜濯ぎの時間だ。「変電所」が生々しく見えてくる。(村嶋正浩)
■原発のことかと。静かに怒りを込めて。(憲子)
■ 夜濯ぎが電気を起こしている、というわけではないのですが、人の営為を思わせます。(かんな)
有楽町電気ビルヂング南館北館晩夏光 トオイダイスケ
留守電に嗚咽の潜む羽蟻の夜 中村光声
◯林昭太郎◯あまね
■「羽蟻の夜」意味深ですね。その上言葉の裏に「嗚咽」が聞こえるのですから。「留守電」が今ではアナログな手段としての意味合いになっていますね。それだからこそ、なお更私達に句が近づいてきます。(あまね)
■色々な状況を想像させる。なにしろ「羽蟻の夜」だからコワイ。(林昭太郎)
冷蔵庫奥で放電する電池 沖らくだ
籐椅子や山麓をゆく終電車 石鎚優
◯トオイダイスケ◯青島玄武◯幸市郎
■籐椅子から電車を見ているわけではないだろう。真夜中、籐椅子でうとうとしていたら、終電車らしきものが通った。田舎のことだから、二両くらいの列車が闇の中をライトひとつで走っているのを想像しているのだろう。距離感と簡潔な情景描写が素晴らしい。(青島玄武)
■都市でない地域を通る中距離か長距離列車であることが、「終電車」(「終電」でなく)という言葉で示されているように思えた(トオイダイスケ)
■旅先の日本旅館から眺める景色でしょうか? 贅沢な旅の様な気がします。(幸市郎)
■旅先の日本旅館から眺める景色でしょうか? 贅沢な旅の様な気がします。(幸市郎)
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