【句集を読む】
郵便の近代
森山いほこ『サラダバー』の一句
西原天気
消し印は昨日の銀座きりぎりす 森山いほこ
この頃の郵便は、ほんと、早く届く。速達にする意味があるのか、というくらい、普通郵便の配達が早い。昨日、銀座のポストに投函された手紙が、今日には受取人の手のなかにある。
丸い、ふつうの、クラシックな消し印が似合いますね。こんなんでもこんなんでもなく、こんな消し印。
なお、「k」音の頭韻、などということはわざわざ言うこともないのですが(言っちゃってる)、舌に載せやすさ、調子の良さには、やはり確実に寄与しております。ただし、「きりぎりす」が「k」音効果だけかというと、そうでもなく、この季語(この虫)が「銀座」ではなく、受け取った場所を示すところがミソ。おもしろい距離感(郵便物が移動した距離感)が醸し出されています。
すなわち、〔手もとの手紙-きりぎりす〕…切手…〔昨日の銀座という時空〕。切手が郵便物とともに、別の時空を、きりぎりすの聞こえる日常へと運んだわけです
森山いほこ句集『サラダバー』(2016年10月/朔出版)
2016-11-13
【句集を読む】郵便の近代 森山いほこ『サラダバー』の一句
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