2016-12-04

2016「石田波郷新人賞」落選展 3. 心にも 黒岩徳将

2016「石田波郷新人賞」落選展




3. 心にも 黒岩徳将

らふそくに屏風の白のとほさかな
虻おちてゆく縁側の履きものに
椀を置き浅利の殻の触れ合へり
目配せの後の鶯笛軽し
早蕨や腹を大きく鳩の飛び
ショー終へて海豹に手のおきどころ
春の川煙草はまはりつつ流れ
春コート落ちたる夜行バスの床
ボトルシップ初夏の手をはなれけり
花栗や子どものくせにかなしさう
踏む音の石から草へ蛍狩
葉にとほき茎の赤らむ額の花
蚊柱の揉みたる夕のひかりかな
河鹿鳴く比叡に黒く薄き雲
風鈴やタオルケットに光透け
地に触れさうに葉の先を蝸牛
心にも呼鈴のあり花茗荷
走り根の苔に尽きたる蜥蜴かな
ラ・フランス背中合はせの絵描きたち

ビル高く高し狗尾草を蹴る

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