2016「石田波郷新人賞」落選展
●
1. 鯨 青木ともじ
三月の壊すタイプの貯金箱
空のその緊張にある木の芽かな
琳派展待つ列長し花粉症
引く波のきらをがうなの死と思ふ
沖に雲捨てられてゐて望潮
はつ夏や生クリームに尾根と谷
振り返るまでを満たして風薫る
三人のうちの浴衣でなき一人
館内図にはいれぬ部屋や黴の宿
焼け跡の蠅がゆつくり立ち上がる
決別の手紙やがては紙魚のもの
森色のウォッカの瓶や夜学生
再会や木犀ばかり見てしまふ
鮟鱇を吊る紐濁りなく光る
しやがみ込みマフラーに池触れにけり
湖に星の映らぬまま凍る
天狼やいつしか村のなくなりて
雪玉といふ一塊の熱を手に
枯野に影人ならぬもの人がたに
友ひとり失くして夢にゐる鯨
●
0 comments:
コメントを投稿