【週俳11月の俳句を読む】
対角線を見つけて
対中いずみ
富有柿対角線の走りけり 小野あらた
柿に対角線を見つけるということ。それは凝視の果てだろうか。それとも瞬時の感受だったろうか。
いずれにせよ、倦んだ大人の眼ではない。赤子のような、童子のような眼で見たら、柿はこういうものでした、と言っている。
そのことの強さ。
「対角線」という認識の一語を掴んで、作者は幸福だっただろう。その達成感をこわさぬように、ごくシンプルな俳句定型を選びとった。
素早く。
余計なものをまぎれこませぬよう。
そのことの強さ。
柿の句といえば、〈いちまいの皮の包める熟柿かな 野見山朱鳥〉が白眉であろうし、〈柿を食う君の音またこりこりと 山口誓子〉〈潰ゆるまで柿は机上に置かれけり 川端茅舎〉〈胸底に柿の実の冷え融けてゆく 篠原梵〉〈柿を剥く十指のすべて柿とあり 斉藤美規〉などがあり、最近では山口昭男さんが〈一本の線より破れゆく熟柿〉(『木簡』)と詠まれたが、掲句はこれらの句を更新し朱鳥句に迫っているのではないだろうか。それが、24歳の若者の手によって成されたことに胸のすくような思いがする。
2017-12-10
【週俳11月の俳句を読む】対角線を見つけて 対中いずみ
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