2017-12-31

週刊俳句2017年アンソロジー 61名61句

週刊俳句2017年アンソロジー 
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みづかきの昏さにたんぽぽの綿毛  青本瑞季  第524号

外套のボタンの取れし日のニュース  青柳 飛  第508号

虫籠の中の日暮や爪楊枝  生駒大祐  第526号

茅舎忌の天象儀から光の粒  伊藤蕃果  第544号

朝はパン飛んでゐる白鳥を見る  上田信治  第557号

晩春の唾液を溜めるかたつむり  丑丸敬史  第516号

ちぎれそうな月が男の上にあり  上森敦代  第547号

関節の音立てている立葵  岡田耕治  第537号

湯ざめしてキシワダワニとなる背中  岡田由季  第557号

ひよこやめなくてよろしい四畳半  岡村知昭  第511号

あたたかき指もて拾ふ朴落葉  小関菜都子  第508号

引き鶴を仕込みし甕にござりけり  小津夜景  第521号

富有柿対角線の走りけり  小野あらた  第551号

空蟬がゐて被爆樹の添木かな  樫本由貴  第537号

おほさじの砂糖を均す昭和の日  上川拓真  第522号

鶴眠る紅絹の色なる夢を見て  岸本由香  第554号

チューリップにやにや笑う星野源  木田智美  第518号

暖房のゆるく実験控え室  桐木知実  第554号

何度でも切られてままごとの人参  西生ゆかり  第509号

くちびるをたどりて冬の森のなか  西原天気  第557号

文明や野焼を遠くキスをして  坂入菜月  第513号

屑籠に捨て風船やなほも浮く   榮 猿丸  第515号

大きくて軽くて遠足の鞄  阪西敦子  第526号

けさらんぱさらん黒くない外套を着て  佐藤智子  第515号

枯草の隙間を細く氷りけり  佐藤文香  第526号

枯れ草や日差しは白くなる琵琶湖  柴田 健  第553号

船酔ひののこるからだに蝶の影  杉山久子  第526号

あをぞらは花鳥を育て神の留守  鈴木総史  第555号

朝霧は置き傘の柄に及びをり  鈴木陽子  第541号

亜細亜にてマネキン並び黴び始む  関 悦史  第521号

そとうみに澪の失せたる薊かな  瀬名杏香  第520号

おぼろ夜の浴槽ほそながい画集  高橋洋子  第531号

旧暦一月六日
ゆふぎりき たれ を なには の ゆめ で まつ  高山れおな  第526号

廃屋をこはさぬやうに照らす月  滝川直広  第556号

歯科衛生士野村さんとの関係性  瀧村小奈生  第510号

卯の花くたし面会謝絶の兄へ羽音  竹岡一郎  第535号

鶯が浴室うずまきのホテル  田島健一  第514号

天井へとどく棚の書夜の蟬  柘植史子  第538号

家ありて町の始まる落し水  豊永裕美  第541号

空想科学小説おでん煮てくださる  中嶋憲武  第511号

狐から鍵をもらつてゆつくり回す  中村安伸  第509号

栗の秋八王子から出て来いよ  西村麒麟  第551号

春雪のやうにペンネームを使ふ  野住朋可  第514号

進めなめくじ芸術はお前のために  野名美咲  第523号

錠剤の刻印文字のおぼろにて  伴場とく子  第517号

去る鯨焚書の火がたわむからむ  福田若之  第557号

鴨川の澄んで何となく平凡  藤井なお子  第548号

うつくしき帯を垂らしてみせ朧  藤本る衣  第512号

篁に蜂あつまりて濃うなりぬ  堀下 翔  第519号

フラメンコスタジオに置かれた兎  松井真吾  第554号

爪を切るあいだ背中にある泉  三宅桃子  第539号

手袋を脱いで握手のあたたかき  村田 篠  第557号

青空の青が剝がれる烏瓜  牟礼 鯨  第545号

鳶色に地球は老いぬ女郎蜘蛛  森澤 程  第543号

陶土あたためる向かひに山眠る  安岡麻佑  第552号

首都おのが光に照りぬ秋の雨  柳元佑太  第542号

黙読のときにほほ笑む夜長かな  矢野公雄  第540号

あたらしい記憶きつと鶫だらう  山岸由佳  第546号

夏痩せの妻と喧嘩や殴らねど  山口優夢  第539号

にんげんに育つて浮いて秋の岸  山田耕司  第526号

臘月の日にあらはれし蚊それから  依光陽子  第526号


(西原天気・謹撰)

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