2018-04-08

【俳人インタビュー】中内亮玄さんへの10の質問

【俳人インタビュー
中内亮玄さんへの10質問


質問者:岡田由季

Q. 一ヶ月に何句ぐらい作りますか?

 A. 大体、10句から20句、多ければ30句くらい詠みますが、そのうちそのまま残せるのは10句に1句あるかないかです。そこから推敲して、何とか10句のうち3句くらいは残せるように努力しています。一度句会に出した作品も、半年でも一年でも納得いくまで直し続けます。

Q.推敲をするのは楽しいですか?

A. やはり一発で決まった方が楽しいです。

しかし、そういう神がかり的な詠み方、それこそ言葉と韻律が同時に空から降ってきた、地から湧いてきた、というような詠みの経験は1年にそう何度もありません。凡人ですから、ひたすらに推敲をするしかないのです。

ただ、推敲は努力によって可能なことなので、つらいけれども、ありがたいです。

Q.有季の句と、無季の句で、作句するときに意識の違いはありますか。

A. これは、まったくありません。詠みたいことを詠むのが俳句だと思っています(しかし、それで伝えられなければ俳人ではないとも思っています)。

Q. 句集『赤鬼の腕』(2017年 狐尽出版)への反響で、一番嬉しかったものは?

A. 金子兜太先生からの「詩的周辺を感じさせて貰って嬉しい」というお葉書と、黒田杏子さんからの手紙です。杏子さんからの手紙の内容は、私には過分な褒め言葉でしたので内容はひかえますが、これ以上の言葉は一生聞けないと思います。大井恒行さんもインターネットでお褒め頂き、恐縮しています。また、坪内捻典さんから4月3日の毎日新聞「季語刻々」で紹介をして下さるとのご連絡を頂き、これは今、楽しみに待っているところです。お返事を頂いた方、全員のお名前を挙げて感謝を表し、また自慢をしたいところですが止めておきます。一番、と言われましたのにすみません。

Q. 句集を作るとき、カタチ(装丁、字体など)で、こだわった所は?    

A. まず、安いこと。質問とずれますが、こだわりと言えばこれが第一です。

次に、『眠れぬ夜に読んでみろよ』、『蒼の麒麟騎士団』は、俳句を読んでいない人が開いてみたくなる本を目指しました。「大学の玄関に様々な句集を並べて、一冊だけあげるから持って行っていいよ、と言われたときに、ごく普通の若者がパラパラっと開いて選んでくれる本」という、明確なビジョンを持って作っています。俳句作品そのものも、一般の方にこそ読んで欲しいと願っています。

ただし、『赤鬼の腕』は、兜太先生に題字を揮毫して頂いたので、デザインはそれだけを全面に出しました。それ以上、こだわる必要がない、素晴らしい題字を頂きました。この本だけは、内容も、俳人以外は読まなくていい、わかる人にしかわからなくていい、面白くなくて結構、ときっぱり割り切った本です。

もちろん、自分では最高に面白いと思っていますが、はっきり言って、金子兜太先生に読んで頂きたくて作った本です。そして、その最大のこだわり、目標は達成されました。
結果論ですが、間に合いました。それが何よりありがたいです。

これに関しては、『俳句界』の林誠司編集長と、対談した如月真菜さんに感謝するばかりです。様々なきっかけが重なって昨年末に句集を上梓したのですが、中でもお二人に背中を押して頂いたことは大きな一因です。

Q. 俳句以外の、本のジャンルで、好きなものは何ですか。

 A. 本、が好きです。

小説は全般に好きです。夏目漱石、芥川龍之介、三島由紀夫など、わかりやすく文豪を尊敬しています。現代で一番好きなのは浅田次郎さん、特に『壬生義氏伝』、『地下鉄に乗って』などの人情ものに弱いです。海外ではダン・ブラウン、最新作『オリジン』も圧巻でした。

また、漫画も好きです。手塚治虫『ブラックジャック』、浦沢直樹さん『MONSTER』、『PLUTO』、井上雄彦さん『バガボンド』、『リアル』らが最高峰です。ワンピースはチョッパーの話が好きです。

日々読んでいる本は軽いエッセーが多いです。真面目な経済の本も読みますが、ホリエモンさんはエッセーが面白い。声を出して笑ったのが、『万城目学の卍固め』。これを読んで、万城目さんの小説は全部読みました。

その他、書ききれませんが、『不道徳教育講座』(三島由紀夫)、『すべての男は消耗品である』(村上龍)は、別の意味でも最高です。今、「看護婦」は差別、「女優」は差別、「女流俳人」は差別といわれています。男女平等はわかりますが、下からの民主主義ならぬ下からの圧政、大衆自らの忖度と同調圧力が厳しい時代となりました。

男が男らしく、女が女らしく生きることは、あるいはそう人から言われることは、そんなに差別的で絶望的なのでしょうか。(色恋の意味での男女の価値観は、他人が横から口を出していいことではなく、極めて個人的な、あるいは家族間の価値観なので、意見が異なる方に議論を吹っかけているわけではありません。個人的な感想です、念のため)

あれ、何の質問でしたか。

Q. 福井県民気質というのはありますか?あるとしたら、ご自分はそれに当てはまりますか。

A. 時間を守れません。5分から10分、定刻から必ず遅れます。それで、私は常に5分前行動を心掛けているのですが、いざ5分前になると、急に忘れ物を思い出したり、トイレに行きたくなったりして結局ギリギリになります。緊張に弱いのかもしれません。

また、会議では絶対に発言しません。悪い面だけではありませんが、軋轢を極端に避ける県民性です。私は理不尽さや公憤を覚えると、自身の事でなくても黙っていられないため、いらぬ敵を作ります。しかし、直す気はありません。

地元グルメ自慢が止まらず他県の方から閉口されます。これは、水と素材が美味しいからなので仕方ありません。

このように、地元を愛しつつも必ず自分たちを卑下した言い方をします。総じて、奥ゆかしい田舎者気質です。

Q. 俳句をする上で、地方在住のデメリットを感じたことはありますか。

リアルな話ですが、お金がかかります。

・・・・・・、みんないくらぐらいお小遣いがあるのでしょうか。県外の句会参加も大変です。
「大阪おいでよ」(往復11,020円)、「東京来ればいいのに」(往復31,220円)。とっても嬉しいのですが、気軽に言わないで下さい(笑)。私は僧籍にありますが手当てはなく、日常はごく普通の勤め人です。海程の全国大会にも1年かけて貯金をして行くのです。
だから、他県に行ったら美味しいものが食べたい。間違ってもこちらにもあるようなチェーン店の居酒屋などには入りたくないので、行った先の俳句関係者との食事は基本的にお断りしています。何万円もかけて行って、福井と同じ店には入りたくない。

主食はお酒なので料理自体はどんなジャンルでもいいのですが、美味しくなかったら一皿で店を出ます。これは譲れませんから、一人がいいのです。ということで、食事には誘わないで下さい、すみません。

・・・・・・なんの質問でしたか。

Q. 俳句をする上で、地方在住のメリットを感じたことはありますか。

A. 他の俳人と触れ合う機会は少ないのですが、反対に外部からの声や評価に惑わされることもほとんどありません。ただ、ひたすらに己と向き合い、思索に耽ることが許されます。

交流のため、たまにSNSなどに誘われますが、全く興味がありません。ほんの近くにいる人の気持ちもわからないのに、会ったこともない人のことまで気にかけていられない。

しかし、最近、つくづく思うのですが、一番気を遣う人と全く気を遣わない人は、表面上同じに見えます。私は、大変に気を遣うのですが・・・・・・。

Q. 最近、驚いたことを教えてください(俳句関連に限らず)。

A. 生まれてはじめて太りました。これは、笑い話ではありません、全然笑えません。20年前は体脂肪2.9%で腹筋は六つに割れていたので、先日、ズボンの試着をした時に自分のお腹が出ていることに驚愕しました。以前から、ちょっとぽっちゃりしてきたな、という気はしていたのですが、現実から目を背けていました。

好きなものを好きなだけ食べていると、本当に太るんですね。

本気で驚いて、今、ものすごく焦っています。



中内亮玄 平成29年・自選十句

九頭竜も深眠りして春北斗

酒蔵に亀鳴く清浄なる暗さ

春愁や小さき風吹く港町

ひかがみのやさしい暗さ春の妻

言葉になる前の手のひら青嵐

缶ビール冷えて深海魚の一灯

青年あり炎昼の個としてバス来る

嗚呼河童忌頭上三千匹ノ蟬

泣き終えてそくそくと食むかき氷

リモコンの蛍を全部押してみる


3 comments:

大江進 さんのコメント...

私も以前、金子兜太の「海程」に入っていたこともあり、インタビューでのお話も、俳句作品もすばらしいと思いました。ちなみに今号の表紙写真は私が撮ったものですが、俳句に詠むと「冷ややかに甌穴の眼の二三十」というあんばいです。よろしくです。

本人 さんのコメント...

温かいお言葉を頂きまして、ありがとうございます。今後とも、よろしくお願いします。

本人 さんのコメント...

失礼します。
このようなことをはじめるべく、只今準備中です。
よろしかったら覗いてください。

https://getsumeikai.wixsite.com/mysite