【俳人インタビュー】
金井真紀さんへの10の質問
質問:西原天気
ぜんぜん活躍していません。昼寝ばかりしています。
肩書きは、「文筆家・イラストレーター」としています。
部活は、俳句部と呑み部、ときどきフットサル部。
Q2 きょう、朝起きてから2~3時間の行動をできるだけ詳しく(公表できる範囲で)教えてください。
①猫2匹に朝ごはんをあげる。
②インドの紅茶を飲みながら、メールとSNSを眺める。
③昨夜書きあげて一晩寝かせておいた原稿とイラストレーション(ウェブサイトで不定期連載している「少年以上、おじさん未満」シリーズ)を見直して、提出する。
④友人が送ってくれたイタリアの社会実験の動画を見て、ちょっと涙ぐむ。映像はジェノバの高校で隠し撮りされたもので、先生が外国人差別をすると生徒たちはどう行動するかという実験。入学初日、全員が初対面という状況で、先生役の人がヒジャブを身につけたイスラム教徒の女の子に向かって色々とひどいことを言うのです。まわりの生徒たちは最初は戸惑っているが、そのうち先生に向かって抗議の声をあげる。さらには、ひとり、またひとりと、授業をボイコットして教室から出て行ってしまう。ヒジャブの女の子をハグする生徒もいる。イタリア語がわからないのでざっくりとしか理解できないのだけど、差別を目撃したとき自力で考えて行動できる高校生の姿にじーんとしました。
⑤近所のコンビニへ行き、切手とヨーグルトを買う(この時点で洗顔もしておらず、寝ていたときのTシャツのまま、髪は寝癖でもじゃもじゃ)。
Q3 現在お住まいの町は、どんなところですか?
寝癖がついたもじゃもじゃ髪で歩ける町。近くに、露天風呂がある銭湯と回鍋肉がおいしい中華料理店があります。
Q4 触り心地が好きなものってありますか?
腕を伸ばしたとき、肘に寄るシワシワ。
Q5 『子どもおもしろ歳時記』はシンプルかつ楽しく、それでいてキモを押さえた良い御本です。つくっていくうえでいちばん苦労されたことを教えてください。
学校や先生や勉強がきらいな子、つまり昔の自分のような、を笑わせてやろう、と思って作りました。自分には子どもがいないので、子ども向けのものを書くときはとりわけ正解がわからず、いつも「昔の自分みたいな子をニヤリとさせる」をささやかな指針にしています。
Q6 私が最初に拝読したのは『世界はフムフムで満ちている 達人観察図鑑句集』でした。おお! カジュアルでキュート! と感心し、ずいぶんと楽しませていただきました。で、うかがいたいのですが、真紀さんは、オジサン・マニア、オジイサン・マニアなのですか?
10代の頃から「おじさん友だち」「おじいさん友だち」が多い人生でした。伊丹十三が「おじさんとは、両親に押し付けられた価値観に風穴を開けてくれる存在」だと言っていて、わたしはそういう存在を熱烈に欲していたのだと思います。それで気づいたら無類のおじさんコレクターになっていました。もちろん自慢の「おばさん友だち」「おばあさん友だち」もたくさんいて、これからは自分がどう「おもしろばあさん」になっていくかの勝負だと思っています。
Q7 昨年刊行の『パリのすてきなおじさん』が好評です。この本の制作中あるいは、この本出てから起きたスペシャルなことを教えてください。トラブルでも心温まるエピソードでも心霊現象でもなんでもかまいません。
わー、どうしよ。「パリおじ」に関しては、作っている最中も、出版された後もスペシャルなことばかりで…。
いちばん最近のエピソード。先日、本を読んでくれた若い女性が、初対面だったんですけど、「こうやって人を好きになればいいんだなってわかりました」みたいなことを言ってくれて、わたしは彼女を抱きしめて泣きたかったです。実際には、うれしくて照れくさくてモジモジしていただけでしたが。
Q8 どういうわけか、雄鶏を飼うことになりました。なんて名前を付けますか? 命名の由来も教えてください。
ウヰスケ。
おととい、ウヰスキー色をした愛車が盗まれて、ただいま自転車ロス。そいつの名前がウヰスケでした。
Q9 俳句は、真紀さんにとってどんなものですか? 食べものに喩えて説明してください。
完全なる妄想ですが、自分が料理上手な酒場のママだとしますね。毎日、ちょこちょこっとおいしい肴を用意する。旬のもの、だけど仕入れ値の安いもの。奇をてらったメニューではないが、ちょっとだけ工夫してある一品。夏はビールに、冬は燗酒に合う。そういう俳句ができたらいいなぁーーー!と妄想しています。
Q10 好きな自然現象について教えてください。
被害にあう人もいるし、毎回やきもきしているであろう農家の人の気持ちを思うと、大きな声で言うのははばかられるのですが…台風が好きです。それから、いわし雲。
●
金井真紀・十句:西原天気謹撰
おかえりのメモと遅日のメロンパン
大陸に春 大皿に豚の足
くちびるも指もきな粉で花曇
夕凪の路地はウスターソース味
夕焼けの向こう死んでのお楽しみ
うぶ毛剃る音の尖りて今朝の秋
どぶろくやほくろから毛がはえている
冬の海光たくさん吸うレンズ
短日やほころびのないオムライス
0 comments:
コメントを投稿