週刊俳句2018年アンソロジー
45名45句
花びらはふちより傷み寒椿 塩見恵介 第560号
冬眠や昔の受話器重かりき 橋本小たか 第561号
姿なき鳥のこゑより寒明くる 堀切克洋 第563号
のど飴を温めている紙懐炉 野口裕 第564号
雪靴の試し履きなり雪を踏む 黄土眠兎 第565号
万国旗ずたずたにして冬に入る 川嶋健祐 第566号
そぼ濡れてあたり白梅ばかりなり 近江文代 第568号
首都を出てすぐ八千草の国となる 高山れおな 第570号
春なれやとろけさうなる鯉のひれ 名取里美 第570号
闇つうと蛇の鼻腔を抜けて春 吉川創揮 第573号
ひきがへる鳴いて夕べの白き皿 三輪小春 第575号
そこにまた別の椿がひたと落つ 小山森生 第576号
ケルンより離れて低き遭難碑 広渡敬雄 第577号
小手鞠に風は囁く『お腹空いた!』 藤田亜未 第578号
琉金の鈴鳴るやうに寄りきたる 川嶋一美 第579号
ひと雨の予感に栃の花が降る 浅川芳直 第580号
敗けつづけでゆく花いばら摘んでゆく 佐々木紺 第580号
さみだれや猫に齢のなきごとく 小山玄黙 第581号
朧夜を港のように明滅せよ 丸田洋渡 第582号
蝦蛄を剥く教祖の顔が義姉(あね)に似る 八鍬爽風 第583号
いいえ花はどこへ行ったの排卵日 加藤知子 第584号
すれちがふたびにほたるとなりにける 紆夜曲雪 第585号
古書積みし間を行くでなく蟹の歩は 吉田竜宇 第586号
滝の上に神様がゐて弾みをり 西村麒麟 第586号
脱臼をしたの山椒魚なのに 紀本直美 第586号
引きあへる力もて揺れ蝌蚪の紐 金山桜子 第587号
柿若葉ひげも剃らずに会ひにきて 秋月祐一 第588号
裏切の水鉄砲を受けて立つ 堀田季何 第589号
龍淵に潜むけはひの空家かな 森尾ようこ 第591号
赤とんぼひとりで帰れますと言う 池田奈加 第592号
初蟬の一息の間の静かなり 浜松鯊月 第592号
ぬいぐるみに肉球のあり明易し 及川真梨子 第593号
あふむけのかなぶん返しやれば飛ぶ 対中いずみ 第596号
はじめて聴く君の寝息と秋の雨 佐藤廉 第596号
触り倒して買わぬタオルよ秋うらら 津田このみ 第597号
檸檬切る初めから愛なんてない なつはづき 第598号
遊廓の跡にたばこ屋小鳥来る 市川綿帽子 第599号
泪してこのよならずや菊枕 今井豊 第601号
曼珠沙華孤心の奥に孤心あり 中岡毅雄 第601号
屋上の最前線に秋の空 中田美子 第605号
築地もはやマスクの中の凪ぎごこち 大塚凱 第605号
火の恋し石包丁に孔ふたつ 花谷清 第608号
つめたいものとぬくいものごと 樋口由紀子 第609号
ゆつくりと空みせてゐる障子かな 浅沼璞 第609号
句帳置けば棺の冬菊沈みたり 相子智恵 第609号
(福田若之・謹撰)
2018-12-30
週刊俳句2018年アンソロジー 45名45句
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