中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
ジョアン・ジルベルト「イパネマの娘」
憲武●先日6日にジョアン・ジルベルトの死亡が明らかになりました。追悼ということで、ジョアン・ジルベルトで「イパネマの娘」。
憲武●この曲、様々なミュージシャンがカヴァーしてますし、いろんなところで、よく耳にします。非常に人口に膾炙した作品ですね。
天気●ボサノバというと、かならずこの曲が出てくるというくらいに大定番・大スタンダード。
憲武●ゴフィン&キング、レノン&マッカートニー、バカラック&デヴィッド、ジャガー&リチャーズと偉大なソングライターコンビが存在しますが、この曲を書いたジョビン&モライスもまたそうしたコンビです。
天気●ギャンブル&ハフ、阿久悠&筒美京平も加えといてください。
憲武●はい。イパネマ海岸の、なんていうバーだったか、アントニオ・カルロス・ジョビンとヴィシニウス・ジ・モライスの二人がお酒を飲んでいると、綺麗な長身の娘が通りかかった。よほど惹きつける魅力があったんでしょう。それでこの曲を二人で書いたと。
天気●へえ、そんなすてきな背景があるんですね。
憲武●詞がね、切ないですよ。特に中間部の ah,por que estou tao sozinho? で始まる一節。「この孤独は何のせい/なぜ、こうも悲しい/この世の美は/自分だけのものではなく/ただ通り過ぎて行くだけ」。これね。参りましたって感じです。
天気●綺麗な女の子を見かけたというだけのカジュアルなきっかけから、孤独や美にもっていくとこが素晴らしいです。素直に、いいかんじ。
憲武●最後の、"and when she passes he smiles/but she doesn't see ってところも。あー切ない。
天気●切ながりすぎ。なんか、過去にあったんですか?
憲武●んー、どおでしょー。スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトの「ゲッツ/ジルベルト」というアルバムの一曲目が「イパネマの娘」なんですが、ジョアン・ジルベルトがポルトガル語で最初歌って、元の奥さんのアストラッド・ジルベルトが英語で後半を歌ってます。アストラッド・ジルベルト単独、そして英語の動画がこちら。
憲武●セットがいい雰囲気ですよね。
天気●ぐっときます。ぺらっと明るい。
憲武●8月の終わりには、「ジョアン・ジルベルトを探して」というドキュメンタリー映画がロードショー公開されます。この際観ておきますかね。
(最終回まで、あと897夜)
(次回は西原天気の推薦曲)
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