中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
ビートルズ「レイン」
憲武●12月の声を聞き、時節柄といいますか、今週と来週に渡って僕と天気さんで、ビートルズを一曲ずつ推薦することになりました。というわけで、雨が降ると、この曲を思い出します。ザ・ビートルズで「レイン」。
憲武●ビートルズ公式曲全213曲の中から一曲選ぶのは、かなり厳しかったです。あれもこれも、それもいいので。
天気●むずかしいですよね。
憲武●ビートルズはアルバム発表ごとに、それに先立ってシングル盤を発表してたんですけど、この「レイン」は、「ペイパーバック・ライターのB面だったんです。こんな傑作がB面ですよ!
天気●B面で来ましたか。意外と言えば意外です、「レイン」は。
憲武●リンゴ・スターの印象的なスネアの五連打から始まるこの曲の歌詞は、
雨が降ってくると/人は走り頭を覆う/死んでしまったのと/おんなじだ/雨が降ってくると/雨が降ってくると
陽が照ってくると/人は陽影にすべりこむ/そしてレモネードを/すするのだ/陽が照ってくると/陽が照ってくると
雨/ぼくは平気/陽が照る/素敵な天気
雨が降って来ても/すべてはおなじ
教えてあげよう/教えてあげよう
雨/ぼくは平気/陽の照る/素敵な天気
ぼくが言っているのが聞こえるかい/降ろうと照ろうと/心のありかたが/かわるだけだよ/聞こえるかい/聞こえるかい
(ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、片岡義男訳「ビートルズ詩集2 角川文庫より)
雨でも晴れでも態度の問題だ、と言っているんです。
天気●カム・レイン・オア・カム・シャイン、ですね。
憲武●そうです。この曲は、テープの逆回転を始めて取り入れたということで有名ですが、そういう革新性とポップな感覚のバランスがいいんじゃないかと。時期的にはアルバム「リヴォルヴァー」の頃です。
天気●「ラバーソウル」から大きく変わった時期ですよね。実験的な要素がぐんと増えた。それと、コンサート活動を終わりにするとかね。
憲武●スタジオに籠もり出した時期ですね。ビートルズはこの年(1966年)のサンフランシスコのキャンドルスティック・パークでの公演を最後に、コンサート活動を辞めています。この曲聴いてると、だんだん呪文でもかけられているみたいな感じになります。ジョージ・ハリスンのギターのフレーズはインドっぽいし。
天気●60年代後半、ヒッピー・ムーヴメントとインドが結びついた時代でもありました。
憲武●リンゴ・スターのドラムは大活躍です。これ聴いてると、リンゴ・スターのドラミングは目まぐるしく展開して、この曲を決定づけているようですね。
天気●メロディー楽器が大きくうねるようで、そこに、このドラム。スネアの連打が印象的ですが、いま聞くと、繊細ですね。もっとバタバタしたルーズな音を記憶してた。
憲武●ちょっとテクノっぽいところもありますかね。
天気●んんん、それはよくわからないですが、クールなドラミングですね。なんとなく。
憲武●ビートルズっぽいといえば、ビートルズっぽい曲だと思います。「ラバー・ソウル」「リヴォルヴァー」の頃が、一番ビートルズっぽいビートルズだったような気がしてます。
天気●人によって、ファンによって、そのへんは違ってきそうですね。
憲武●やっぱりこの曲でも、ジョン・レノンの歌唱が、歌唱というより声ですね、魅力的です。歌は声がいのちということを再確認させられます。惜しい人を亡くしました。
天気●はい。今日12月8日が命日ですね。……えっ? どうしたんですか?
憲武●(やおら椅子の上に立ち上がって)ジョーーーンッ、どおして死んじまったんだよおーーーっ!
(最終回まで、あと877夜)
(ビートルズ特集は次回につづく)
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