【週俳1月2月の俳句を読む】
鬼もうつろう
小林かんな
水仙や線路を切り替へるレバー 細村星一郎
レバーは一日に何度切り替えるのだろう。駅によって、路線によって、頻度はさまざまだが、レバーを引くたびに、電車の進路が切り替わると思うと改めて感慨深い。ほんの少しの違いがどんどん広がっていく。出会いと別れの場である駅に訪れる出会いと別れの季節。
夕方の石のしづかな鬼やらひ 田口茉於
鬼やらひはもとより鬼にとっては受難の夜。考えてみると、人間が「鬼」と一括りにして遠ざけるのは悪ばかりとは限らない。世間という多数派に馴染まない少数者も「鬼」と遠ざけられてきたのではないか。「静かな石」と描かれても、境界線を引くための石、投げる礫としての石が見えてくる。
時は夕方、鬼やらひの始まる前と思い込んでいたが、現代、追儺の儀式は日中に実施されることも多いようだ。いつの間にか鬼は日の高いうちに現れ、祓われるように様変わりしていたらしい。寡黙な句だからこそ、いろいろ思わされた。
第665号 2019年1月19日
2020-03-15
【週俳1月2月の俳句を読む】鬼もうつろう 小林かんな
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿