〔今週号の表紙〕第687号 リワ砂漠
堀田季何
アラブ首長国連邦アブダビ首長国内陸、サウジアラビア国境附近にリワ砂漠がある。オアシスが点在していて、昔からベドウィン(遊牧民。同国国民は全員ベドウィンもしくはベドウィンの子孫)が一瘤駱駝を飼育したり、国民的な食物であるデーツ(棗椰子)を栽培したりしている。アブダビやドバイの首長一族も祖先はベドウィンであって、同地にも住んでいたことがあるとされている。ただし、多くの人にとって魅力的なのは砂漠そのものである。
ドバイ近郊の砂漠は、砂が粗めで白く、距離的に観光客が多く、高圧電線もたくさん通っているのに対し、リワ砂漠は、砂がきめ細かくて赤く、距離的に観光客は少なく、高速道路以外は美しい自然の景観が維持されている。高速道路を下りて、砂丘の方に向えば、自分と砂と風と太陽しかない静謐な時間が保証される。写真のように、砂丘には見事な縦縞の砂紋が風によって形成されていて(歩いて登ることもできる)、それだけでも来た甲斐があるが、日没もまるで〈大空の斬首ののちの静もりか没ちし日輪がのこすむらさき 春日井建〉のようで、実に感動的である。
津田清子はナミブ砂漠で多くの無季句をなし、それらを『無方』という句集に収めたが、リワ砂漠とリワ・オアシスもまた俳句を作るのに恰好の場所で、私も都合20句くらいを無季及び超季で作って『亞剌比亞』というベタな名前の句集に収めた。アラブ首長国連邦の出版社から、日本語の句に私自身の英訳と現地人の(英訳からの)アラビア語訳を附けた対訳版として出た。アラビア語訳は宗教検閲の対象になったが、訳者の機転で二句だけアレンジして何とか合格。いつか大幅に加筆修正して、日本でも正式に出版したい。あ、その前に、第二句集を出さねば。
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