2020-10-04

【空へゆく階段】№35 解題 対中いずみ

 【空へゆく階段№35 解題

対中いずみ


「青」374号(1985年11月号)は、「「波多野爽波アルバム」の周辺」と題して特集を組んだ。同年「俳句四季」8月号に「波多野爽波アルバム」が載ったらしく、それに寄せる一文を、飯島晴子、粟津松彩子、友岡子郷、太田文萌、島田刀根夫、田中裕明、岸本尚毅が書いている。みな写真から、爽波の家族、ミューラー初子、虚子、立子などに触れているが、裕明は、写真には全くふれず、出会いのシーンや素顔を描いている。投句をはじめてほぼ一年後にはじめて爽波にまみえたというのは、ちょっと意外なことであった。

本号の裕明作品は以下の6句。

たなごころ墨によごさば蘆刈らむ

蓑虫や記憶のながれゆくところ

このたびも蓑虫さがる月の宿

立待の戻りの棹を深くさす

紙の上に雨の紋様秋昼寝

貝割菜筒井のそこも月のかげ


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