中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
レッド・ツェッペリン「black country woman」
憲武●十月のよく晴れた日などは、漱石の「永日小品」のなかの短編の「ピトロクリの谷は秋の真下にある。十月の日が、眼に入る野と林を暖かい色に染めた中に、人は寝たり起きたりしている」という一節や、この曲が浮かんできたりします。という訳で久々の日差しを浴びながら、LED ZEPPELINで「black country woman」。
憲武●この曲、アルバムでは「フィジカル・グラフィティ(1975)」、シングルでは「トランプルド・アンダー・フット」のB面です。録音は、このアルバムの前作「聖なる館(1973)」の頃で、ミック・ジャガーの別荘の庭で録音されてます。「聖なる館」のアウトテイクなんですね。曲が始まる前にジミー・ペイジとエンジニアの会話、「飛行機の音、入っちゃうけど」「いいんじゃない」があって、飛行機の爆音が聞こえます。
天気●メイキング風の処理ですね。
憲武●この飛行機の音が、ギターが始まっても聞こえていて、なんか空の青さとか高さが見えてくるんですよね。録音の時期は『永遠の詩 レッド・ツェッペリン・ストーリー』(リッチー・ヨーク著 1988年 シンコーミュージック)によると1972年の初夏だったらしいんですが、僕はずっと秋の景色を想像してたんです。
天気●レッド・ツェッペリンというバンド自体が秋か冬ってイメージです。春とか夏らしくない。もっとも、英国のロックバンド全体がそんな感じですが。
憲武●ですね。邦題は「黒い田舎の女」と、そのまま訳した感じですが、こうなると「黒い」がどこに掛かってくるのかと、高校時代はそればかり考えてて、勝手に「黒い、田舎の女」と解釈していて、つまり田舎の女が黒い、黒人の女というイメージで聴いてました。
天気●ブルース生ギターのリフ(繰り返しフレーズ)で進行する、古いカントリーブルースの曲調ですから、よけいにそうなんじゃないですか。
憲武●ブルースハープの音色もそう感じさせるんでしょうね。あとで知ったんですが、ロバート・プラントの生まれ故郷のウエスト・ミッドランズのことを言ってるらしいんですね。ロバート・プラント自身が「ど田舎」と言ってまして。
天気●ブラック(黒)って、この場合、暗さとか蒙(くら)さを連想させますね。
憲武●開けてない感じ。ジョン・ボーナムのこれでもかというドラムが聴こえてくる辺りから、不思議な雰囲気になってくる曲ですけど、最後まで十月の暖かい日差しに包まれているイメージなんです。
(最終回まで、あと833夜)
(次回は西原天気の推薦曲)
(次回は西原天気の推薦曲)
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