18. 山本真也 すべての人に口づけを

 18.  山本真也　すべての人に口づけを

 

早春の幼稚園児に囲まれる
会長の法蓮草に胡麻を擂る
腹痛を押して龍天に登る
春昼に許可なく立ち入ること禁ず
永日の部屋に籠って子を作る
紋白蝶私の指にとまらない
ちょうちょうが東尋坊を飛んでいる
蛇穴を出て高速道路の方へ
アルコール消毒液と朧月
薇は第二小節に潜む
はくもくれんはるか結婚したらしい
花冷えの奥さんの目は青かった
晩春におっぱいの実が生るという
憲法記念日俳論を戦わす
白牡丹喜んでいるふりをする
万緑ですホワイトニングしませんか
青嵐軍艦島を吹き渡る
風鈴は生活雑貨コーナーに
七階の新作日傘コレクション
永遠をここに誓うよ濃紫陽花
炎帝と麒麟に会いに行く子供
スシ　サシミ　ゲイシャ　サムライ　レッドフジ
睡蓮を僕が描いてもいいですか
青紫蘇が夢の中にも生えて来る
ごきぶりのことを思えばごきぶりが
ごきぶりが駆け込んで行くあかずの間
西日中芸能人が不倫する
石ころに目鼻を描いて地蔵盆
コーギーは荒地盗人萩の中
台風が日本列島舐め回す
停電が長引いている星月夜
秋茄子をいただいていただけなんです
小鳥来るヒッチコックを見ていると
節々がなんだか痛い昼の虫
値崩れを起こした土地の地虫鳴く
先の世は呪術師でした山薊
素十の忌デッサンうまくいきました
札幌の女にふれて静電気
下半身だけ絶滅の狼に
バスタブの柚子を沈めたままにする
白菜を割ったところで見つかった
注連縄を買いに東急ハンズまで
門松をアマゾンプライムでたのむ
踏切を渡るみたいに年を越す
左眼をあちらに置いて年を越す
冬の海ミサイルぼたりぼたりかな
冬薔薇二十六世紀の地球
寒猿はスカイツリーを昇り降り
大雪がありとあらゆるもの均す
マスクしてすべての人に口づけを