2020-11-07

20. 薮内小鈴 蜂と切手

 20.  薮内小鈴 蜂と切手

はからずも五色の蕪揃ひけり
乗越して電車小春の河をこゆ
水中を藻にまみれたる枯蓮
ビル群の影より外れ日向ぼこ
ゆりかもめ退屈顔の前へくる
万両や夕暮にして晴れ渡り
掌に画面うつろふ冬の蠅
居りもせぬ猫の爪あと古暦
雪吊の向うを遠く船通ひ
北風に鵯はしばしを尖らせる
湯気立てて延々ときくオペラ曲
葉牡丹の中に朝日の潤みをり
砕かれし海鼠の如き灰残る
立春のホームの先にひらく傘
店なるや囲ふ椿に問うてみむ
冴返る声混ざりつつ交差点
指を組み眼閉ぢたる蝌蚪の紐
初雷の方角しかと忘れざり
柳の芽ジャングルジムへふり注ぎ
軸ばかり猿の食べし春子かな
体操はダンスに変はり桜の夜
もの部屋を溢れて春の雲動く
学舎に林ありけり春コート
流木で撃ち合ふことも磯遊び
蜂と子と父それぞれに間かな
若楓魚のざはめくここかしこ
外を見て美容師ひとり祭笛
落書の壁を薄暑にふりかへり
かはせみと車の中の道具箱
仄白き朝の聖火やバナナ剥き
蝸牛やうやく越ゆる琴のうへ
公園の昏がりいくつ額の花
西日さし片目だるまの爛々と
笹の葉を鳴らす蜥蜴が岩に沿ひ
どつと風起こる童話と涼みをり
海の日にカウンターへと長き列
翻車魚も浴衣の袖も向きを変へ
敷物の跡がうつすら夏野かな
いづこより朝顔来しと蔓探り
蜩や番犬の眼のしづかにも
房を手に零るる葡萄五六粒
濡れてゐる漫画雑誌と女郎花
整然と自転車ならび燕去る
折詰の醤油ただよふ野分あと
ネクタイを一本掴み露けしや
秋の蝶青年ヤンと呼ばれ行く
爽やかに切手選びぬ暗算し
ゆりかごの縁より縁や秋の空
福神漬なるも樹脂製火恋し
大時計捨てられ柿のなほたわわ


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