2020-11-07

8. 島村福助 春のウイルス

 8.  島村福助 春のウイルス

マスクして微光を発す裸の眼
咳ひとつガイアであらば震度7
街路には痰と鼻紙枯木星
春節を福が倒れてゆくニュース
春の朝もこもこもこと脱糞す
春昼や人以外ほぼ風葬の
少女らが悪を蹴倒し桃の花
森閑とやむ音も聞こゆ春の雨
チューリップ四頭身のぼくだつた
麗かな全世界かな崖の上
底辺は菜の花の線正午かな
一面の白詰草の我一人
アメーバに食べられてゐる朧月
花の宵おのづと開く解剖書
たんぽぽのわたは崩れてゆく顔か
春の水「山のあなた」を朗読す
囀はどこもかしこも譜面かな
春風に出す生ごみは生きてゐる
殴らるる復活祭の太陽に
蛇口から舌のごとくに春うれひ
アスファルト地獄を灯し菫咲く
ウイルスに春壊さるるるるるるる
春泥のにたりと笑ふウイルス禍
春嵐誰の肺から出たものぞ
青空に吸殻ほどの春の雲
春の闇ふたりつきりで巻くとぐろ
花筏コンクリートは高速で
春の雷人の逝くたびだとすれば
間隔を空けひとりづつ卒業す
いつの間に変なをぢさん春の星
志村けん岡江久美子と野に遊ぶ
春めけば叫ばずに聴く死者の数
春の風邪だけだと思ふだと祈る
死は春夜我が生の灯を取り囲む
新型の蝶は「剣の舞」を舞ふ
花を見るだけの花見を見て帰る
春も鉄小学校を鎖すさへ
春休みクレヨンで描くコロナちやん
「ウイルスのやうな」が浮かぶ花吹雪
人類の咳が聞こゆる放哉忌
ウイルスに生まるるも縁仏生会
心肺のけなげな音色啄木忌
がらんとし五月の青が降臨し
ウイルスの天敵と成れ鯉幟
澄んだ目に映る世界苦こどもの日
朔太郎忌を遺伝子が浮游せり
無い年もゆつくり過ぐる賀茂祭
大樹いま陶然たらむ青嵐
祇園会の鉾が部品で眠る夏
幻の開会式も暑苦し

1 コメント:

折戸洋 さんのコメント...

ウイルスと吾のあひだのマスクかな 折戸洋