9. 杉原祐之 空バス
営業所行の空バス年の夜
流感の子に付き合うて粥すする
大試験どの子の耳も真つ赤なる
父の忌を少しく過ぎし余寒かな
片栗の花触れ合はず震へ合ひ
ふらここを互ひ違ひに姉妹
安全旗社旗と国旗と彼岸西風
休憩のタクシー並ぶ花の昼
汐入の風に散りゆく桜かな
バスを待つ花見疲れの人の列
舟屋よりぶら下げらるる目刺かな
新婚の部屋に小手毬映えにけり
足場組む為の資材に落花降る
水系のここで岐るる山桜
車椅子バギーを並べ磯遊
しやぼん玉みとめて走り出しにけり
桜蘂降る胸像の男爵に
本丸の跡の駅舎の楠若葉
ダービーの日の一点の曇りなく
青梅の産毛同士の光りあふ
熱中症注意呼びかけ神輿舁
社員証落ちてをるなる茅の輪かな
園丁の掃きこぼしたる梅雨茸
七夕の夜の七人の句会かな
ドア閉てる音の響ける避暑の宿
ハンモック山の日照雨を浴びながら
谷戸径の更に奥まり竹の秋
買うてみて持て余したるかき氷
ワンボックスカーに夜店の品を積む
浮袋わかしお号の網棚に
砂埃塗れの日傘果実売る
境内の百名分のビヤホール
プレハブの現場事務所の小判草
一口のサイズのビール墓洗ふ
もじやもじやの雲を割りたるけふの月
秋晴の心療内科混み合へる
養護学校生徒の出店里祭
虫送運動場を突切つて
大楠に野分の雨を避け切れず
万灯のやつて来さうでやつて来ず
渋滞を起こし万灯練りゆける
呼掛の遂に揃ひて赤い羽根
稲掛のシート一枚外れたる
脚立より脚立へ移り松手入
熱燗や合はぬ予定を押付け合ひ
ハロウィンを終へてシチューを煮込みたる
白杖の先にひつつく濡落葉
冬の蠅床暖房の上を這ふ
着ぶくれて違法駐輪取り締まる
元日の坂じつくりと踏み登る
1 comments:
シャープペンきゅんとまはせり大試験 折戸洋
コメントを投稿