2020-11-29

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】ヤードバーズ「Train Kept A Rollin'」

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
ヤードバーズ「Train Kept A Rollin'」


憲武●最近、めっきり寒くなって参りましたので、家では甘くて酸っぱいレモンティーばかり飲んでます。という訳で、The Yardbirdsで"Train Kept A Rollin' "です。


憲武●この映像はヤードバーズ後期のようですね。ニュー・ヤードバーズになる直前かもしれません。ジミー・ペイジがしっかりと主導権を掌握しています。

天気●テレキャスター時代ですね。ジミー・ペイジ=レスポールのイメージなんですが、レッド・ツェッペリンも初期はテレキャスターでスタジオ録音していたそうです。

憲武●ジミー・ペイジ自身も「俺のお気に入りはオールド・フェンダーのテレキャスターさ」と発言してます。この曲には、優れたカバーが存在しますが、わが国のシーナ&ザ・ロケッツの「レモンティー」(1975々)など有名ですね。


天気●カバーというか、下敷きにした。いま聴いてもカッコいい。

憲武●はい。スネークマンショーに収録されているテイクなんですが、このテイクがベストかと。で、ヤードバーズの紹介した曲はオリジナルかというとそうではなくて、これもカバーなんですね。ジョニー・バーネットの「ハニーハッシュ」(1956年)という曲です。


天気●なるほど。このリズムは強烈。リフのギター、不思議な音色を出してますね。ワウペダルみたいにも聴こえますが、このエフェクターは60年代かららしいので、この頃にはなかったはず。ううん、興味がわきます。この時代のロカビリーでこんなギター音、聞いたことないし。

憲武●そうなんですよ。で、この曲がオリジナルかというと、そうではなくて、元ネタはどうやらタイニー・ブラッドショウの"The Train Kept A Rollin' "(1951年)らしいんです。


天気●こうなってくると、リズムが当時のブギウギだし、面影は淡いですね。曲タイトルは同じだけど、歌詞は違うし。

憲武●ちなみにヤードバーズのTrain Kept A Rollin'の邦題は「ブギウギ夜行列車」てんです。笑。歌詞が違うと言えば、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「欲望」(1966)の中のワンシーンでヤードバーズがThe Train Kept A Rollin'を演奏してるんですが、著作権の問題か何かで、タイトルを"Stroll on"として、歌詞を変えて歌ってるんです。カバーって、タイトル違い、歌詞違いもありなのかなと。

天気●日本語訳なんかは、そうですよね。古くはエノケンの「ダイナ」とか。

憲武●ああ、そうですね。他にもあるかもしれないですね。で、この曲、ブルースからロックンロール、ロックへという形式の変遷はありますが、そのスピリットはしっかりと継承されてると思うんです。

天気●ブルースは源泉みたいなもんですからね。汲み取った水をどう使うかは、時代のモードによる。それに個々のバンドやミュージシャンによる。モードに逆らう人も、いつの時代にもたくさんいます。

憲武●先行作品の存在ということを、考えてしまうんですが、文学においては内田樹が「街場の文体論」(2012、ミシマ社)で言及してる村上春樹「羊をめぐる冒険」とレイモンド・チャンドラー「ロング・グッドバイ」とスコット・フィッツジェラルド「華麗なるギャツビー」の関係と、類似してるんじゃないかな、と思います。つまり先行作品があって、そこに作り手の解釈が加わって次々と後続の作品が生まれてくるという関係ですね。

天気●音楽が引用であるように、ことばも引用です。もちろんのこと俳句も。「先行」という問題に意識的でなければ、刷新も生まれないということだと思います。なんかマジメなこと言っちゃった。てへぺろ。

憲武●何が先行作品かというのは、なかなか言い切れないなとも思います。もうちょっと、レモンティーを飲んで考えたいです。


(最終回まで、あと829夜)
(次回は西原天気の推薦曲)

0 comments: