【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
トッド・ラングレン「グッド・バイブレーション」
憲武●ビーチボーイズのカヴァー第二弾てえことで、トッド・ラングレンによる「グッド・バイブレーション」です。
憲武●ほとんどオリジナルに近いですね。音楽の模写と言ってもいいかもしれません。これ、トッド・ラングレンの伝家の宝刀、一人多重録音です。
天気●大学生の頃、よく聴きました。麻雀のとき、「ピンズがぜんぜん通っとらんグレン」なんてダジャレ飛ばすやつもいたりして。「イーノ、イーノ、当たってもいいの、ブライアン・イーノ」と応えるとかね。
憲武●はははっ。オリジナルのマイク・ラブの低音域に比べると、若干マイルドかな? という感じですね。このカヴァーは、"Faithful"(1976)に収められてます。邦題は「誓いの明日」でしたか。
天気●すごい邦題。いつも思うのですが、洋楽の仕事している人たちって、どういうネーミング会議してるんだろうと。
憲武●うーん、確かに。今般は割とそのまま原題でって感じですかね。A面は、このビーチボーイズ、ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、ボブ・ディランなどのカヴァー、B面がトッドのオリジナルというアルバムです。
天気●B面の印象は薄いのですが、2曲目の「Love of the Common Man」がライブアルバム「Back to the Bars」(1978年)でなかなかよかった。ライブ映えしてました。
憲武●このカヴァーには解釈というものがなくて、リスペクトのみの完全な複製ですね。盲目的に再現してみました! といった感じの。愛を感じます。
天気●アルバム名「faithful(忠実・誠実)」の名のとおり、ですね。
憲武●ビートルズの楽曲「レイン」「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」もカヴァーしてるんですが、違和感がない。そうそう、そんな感じとにこにこしてくる。
天気●いかにも多重録音的な音作りを、あらためて一人多重でやってる。
憲武●ほとんど制作の時期が一緒なのに、ビーチボーイズは莫大な人数、日数、金額をかけてる。トッドは一人でチャチャっと、まあチャチャっとでもないんでしょうけど、やってる。複製ってそういうことなんですね。試行錯誤がないから。他人の作品に似せて、まあ絵画でも小説でも、なにかを作るときは生半可な愛情では出来ないなと思う年の瀬です。
(最終回まで、あと825夜)
(次回は西原天気の推薦曲)
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