【空へゆく階段】№40 解題
対中いずみ
「ゆう」7号。今号の「ゆうの言葉」の末尾の語、「類型をおそれよ。そして恐れすぎることのないように。」は今もときおり筆者の胸に蘇る。長い伝統をもつ定型詩である俳句にとりくむ時に、だれもが心しないわけにはいかないだろう。おそらくは裕明本人が幾度も自らに放った言葉ではなかったか。
「ゆう」には「悠悠漫歩」というタイトルで、外部俳人による「ゆう作品」鑑賞コーナーがあった。同じ人が3ヶ月続けて鑑賞して下さった。最初は石田郷子さん、次が千葉晧史さん。7号からは千葉晧史さんの評の一部を引いておく。
芝を焼くまでの日月いま焼けり 裕明
俳句は常に「いま」を詠むものである。つまりこの句に新しさがあるとすれば、認識そのものが新しいのではなく、認識方法が新しいのである。一件、柔和な作者のうちにひそむ能動性をあきらかにした試み。
7号の裕明句は以下の通り。太字は句集収録句。
卯月野
貼りつける花びらと泛く花びらと
花ごとにわが詩のあはくなりゆけり
雨なれば筍掘の無口なる
青麥や沙翁は遠き國のひと
隼を見しことつげよ五月鯉
はしる水すぐにしづもる藤の花
卯月野の流れは神へ曲りけり
ランドセル八十八夜のぬくみあり
中腹にしづかな家や更衣
夜の墓五月の風よ強く吹け
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