【空へゆく階段】№41 解題
対中いずみ
「晨」1997年5月号は、「晨」79号。裕明38歳、「ゆう」創刊2年前である。「晨」の新シリーズ「昭和初期の俳人」の第一回に裕明は登場している。川端茅舎を選んだのは、裕明の意志か編集部からの要請だったかは定かではないが、「童子」と題したのは裕明自身だったろう。そういえば、裕明22歳で角川俳句賞を受賞したときの作品タイトルは「童子の夢」であった。後年、裕明没後刊行された『田中裕明全句集』の栞に、前登志夫さんが「彼は制吒迦童子像にどこか似ていた。不動明王の脇士である」とし、『夜の客人』を「一言もわたしにものを言わなかった制吒迦童子をなつかしんで、折々ひらいた」「なつかしいわが制吒迦童子よ。永遠なれ!」と書いてくださった。制吒迦童子像はいろいろあるがたしかにその顔立ちには裕明の面影がある。
「晨」1997年5月号より、5句を引く。
いまさらに虚子の五句集春氷
壺焼やこの人は磨けば光る
つちふるやをのれのほかは皆他人
櫻待つみんな昔の仲間かな
手を振るは別れのしぐさ豆の花
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鉄棒の童ぽとりや鰯雲 折戸洋
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