2021-08-08

【空へゆく階段】№46 解題 対中いずみ

【空へゆく階段】№46 解題


対中いずみ



「晨」69号(1995年9月号)掲載。文中、「我はいかなる川か、と詠んだ歌人は」とあるのは前登志夫さんで、

 暗道のわれの歩みにまつはれる木ありわれはいかなる河か

という歌が歌集『子午線の繭』に収められている。

本号の作品10句。

ぼんやりす梅雨明の木にもたれゐて

尺蠖や縁に子どもの足ゆらゆら

人を恋ふ瓜を冷しておきにけり

引越の昔荷車冷瓜

夏桑のうすき書物をひもどきぬ

人の子のをらぬやすけさ土用みち

七月の北は青き夜つづきけり

顔痩せてにほどりの巣を出でにけり

寸毫も尾のなき人にして涼む

もののふの昼餉みぢかきのうぜん花

※9句目は、「寸毫も尾のなき人にして涼し」のかたちで『先生から手紙』に収められている。



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