【空へゆく階段】№46 解題
対中いずみ
「晨」69号(1995年9月号)掲載。文中、「我はいかなる川か、と詠んだ歌人は」とあるのは前登志夫さんで、
暗道のわれの歩みにまつはれる木ありわれはいかなる河か
という歌が歌集『子午線の繭』に収められている。
本号の作品10句。
ぼんやりす梅雨明の木にもたれゐて
尺蠖や縁に子どもの足ゆらゆら
人を恋ふ瓜を冷しておきにけり
引越の昔荷車冷瓜
夏桑のうすき書物をひもどきぬ
人の子のをらぬやすけさ土用みち
七月の北は青き夜つづきけり
顔痩せてにほどりの巣を出でにけり
寸毫も尾のなき人にして涼む
もののふの昼餉みぢかきのうぜん花
※9句目は、「寸毫も尾のなき人にして涼し」のかたちで『先生から手紙』に収められている。
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