2021-09-18

対中いずみ 【空へゆく階段】№50 解題

【空へゆく階段】№50 解題

対中いずみ



「晨」19号(1987年5月号)掲載。48号で「裕明はときどき「青」や「晨」に句集評を書いたが、いずれも単なる句集の鑑賞で終わらず、俳句の特性を考えながら執筆している」と書いたが、ここでは「俳句を読むということ」「俳句に出会うということ」をキーワードにして稿を進めている。

ちなみにこのころ、「晨」では宇佐美魚目、大峯あきら、岡井省二の三代表による雑詠選が行われていた。この号での宇佐美魚目の選後評に次のようなものがあった。
 大寒や高きところに漁夫の墓  相山一善

これはまた骨太な表現。海山の接するところ、寸分の隙なき作。海原を仕事場とした人々が眠るには最もふさわしい墓山、悠久につながる風景。
こういう読みが、句の美しさを教えてくれる。

以下、この号の裕明発表作品10句。

雪解川赤子のねむたさうな顔

赤ん坊の毛の立つてゐる椿かな

いつまでもからだふるへる菜の花よ

春雪の岩魚骨酒二合ほど

淡雪のなめて旅みぢか

彼岸桜は一舟の音に添ひ

連翹の句をめでてより春の雪

初桜酒興詩情をわかつなく

花の句は湖中浮べしときの作

ト書にも花の散るとて舞へるとて


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