【空へゆく階段】№50 解題
対中いずみ
「晨」19号(1987年5月号)掲載。48号で「裕明はときどき「青」や「晨」に句集評を書いたが、いずれも単なる句集の鑑賞で終わらず、俳句の特性を考えながら執筆している」と書いたが、ここでは「俳句を読むということ」「俳句に出会うということ」をキーワードにして稿を進めている。
ちなみにこのころ、「晨」では宇佐美魚目、大峯あきら、岡井省二の三代表による雑詠選が行われていた。この号での宇佐美魚目の選後評に次のようなものがあった。
大寒や高きところに漁夫の墓 相山一善これはまた骨太な表現。海山の接するところ、寸分の隙なき作。海原を仕事場とした人々が眠るには最もふさわしい墓山、悠久につながる風景。
こういう読みが、句の美しさを教えてくれる。
以下、この号の裕明発表作品10句。
雪解川赤子のねむたさうな顔
赤ん坊の毛の立つてゐる椿かな
いつまでもからだふるへる菜の花よ
春雪の岩魚骨酒二合ほど
淡雪のなめて旅みぢか
彼岸桜は一舟の音に添ひ
連翹の句をめでてより春の雪
初桜酒興詩情をわかつなく
花の句は湖中浮べしときの作
ト書にも花の散るとて舞へるとて
0 comments:
コメントを投稿