【空へゆく階段】№54
編集後記
田中裕明
「青」1981年・第12号
今年最後の号をお届けします。
ふりかえってみれば、今年は三冊の句集の特集におわれるような格好になって、独自のテーマを持った企画を展開することができませんでした。これは来年の課題。
あとはひとりごとです。
--本を探していたのではない。しかし読みたいと思った本が棚から失われたのは本当のことなのだ。考えのみちすじを光からとざすこと、その方法をみつけようとしていたのは確かだ。
思考の痕跡を残したくない、これはずいぶん以前からのくらい願望だった。思考の痕跡がぬらぬらと光る軌跡のように目に映っていたのは、それほど昔ではない。その軌跡がどこに至るかさえ、ある立体感をもって知覚されていた。未来とはわたしの思考の展望の異名にほかならなかった。つまり未来をわたしの体内のどこかに所有していると信じていたのだが、いまおもえばそれは誤解だった。わたしは、わたしのからだが動かしようのないはっきりしたものばかりで造られていることに気づいてしまった。
もちろん未来を外部に求めることもできない。そんな代物が体内で自己増殖をおこなっていると信じていたわたしは落胆した。
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