2022-01-30

【空へゆく階段】№57 解題 対中いずみ

【空へゆく階段】№57 解題

対中いずみ


「晨」45号(1991年9月号)掲載。裕明32歳の頃の文章だが、亡くなる一年ほど前にも、「ゆう」に「日本語のもんだい」という短文を書いている。そこでは『日本語で一番大事なもの』という大野晋・丸谷才一の対談集を勧めている。「日本語に無理をさせないこと、そして日本語の力を十分にはたらかせることが大切です」「いま、戦後何度めかの日本語ばやりと言われています。言葉に関する本もいろいろ出ていますので、手にとって見てください」ということばとともに。

本号の発表作10句。

いちどきに梅雨傘を閉ぢ語りだす

梅雨寒の葬列の端ころぶなり

明眸をたちまちなくす仔猫かな

おとづれてかならず水を打ちくるる

涼しさの玻璃戸をぬけて旧居とは

寝息して藻の花のよく見ゆるかも

巣立ちたるあとおそろしき夜警かな

滴りの人をしのぶによきところ

肘たれて噴井にとどくかと思ふ

夕景の菖蒲田おろかにも見たり


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