2022-03-13

後記 ◆ 松本てふこ


西川火尖第一句集『サーチライト』の特集を組んでみた。動機はずばり、2022年3月27日(日)に東京のマルジナリア書店で行われるイベント(詳細は後述)の周知と、この句集がもっと読まれたら面白いのになという気分だ。ご多忙の中、多彩なフォーマットで参加してくださった執筆者の方々にまず御礼申し上げたい。

思い入れのあるコンテンツに対するスタンスというのは、コンテンツによって変わってくると思う。例えば、心ゆくまで語りたくなって、人に対して、またはSNSで言葉を尽くそうとするもの。例えば、人の意見を聞きたくて、検索しまくっていろんな感想を眺めるけれど自分で何か発信したりはしないもの。例えば、人の感想も自分で感想を言葉にすることもせず、ただひとりで好きでいるもの。

私にとって『サーチライト』は、2つ目の「例えば」である。感想ツイートはしたが、自分の意見を表明するよりも、誰かにこの句集の存在に気づいてもらうために書いた。気づいてもらうためにタイトルや誌面を考え、原稿を依頼した。そう信じて疑わなかった。

しかし本当はそうではないのかもしれない。本当はただ、この句集に対して感じている魅力を私がまだ言葉にできていないだけで、この使命感のような中途半端なお節介のような感情は、ほんの応急処置のように私の中にあるだけなのかもしれない。

この文章を読んでいる皆さんにとって『サーチライト』はどんな存在になるだろうか。まだ読んでいない人は予想してみてほしいし、もう読んでいる人は早速考えてみてほしい。そして時間があったら、こちらのイベントに参加してみてほしい。



 
no.777/2022-3-13 profile

■西川火尖 にしかわ・かせん
1984年生まれ。2004年頃から俳句を作り始め、現在、主に「炎環」や「Qai〈クヮイ〉」で作品や文章を発表しています。不安や焦燥が感じられる俳句に弱いです。「子連れ句会」問合せ先。第24回炎環賞「みらい賞」、第11回北斗賞を受賞しました。

■近恵 こん・けい   
1964年青森生まれ。「炎環」同人、「豆の木」「ロマネコンティ」参加、「尻子玉俳句会」お世話係、現代俳句協会会員。

■伊藤幹哲 いとう・まさのり
1988年栃木県生まれ。同県在住。2020年第7回俳人協会新鋭評論賞、21年第5回俳人協会新鋭俳句賞、21年第12回北斗賞。22年「馬醉木」同人。

■柴田葵 しばた・あおい
1982年生まれ。歌人・ライター。第2回石井僚一短歌賞次席、第1回笹井宏之賞大賞受賞。歌集『母の愛、僕のラブ』(2019年・書肆侃侃房)。「Qai〈クヮイ〉」同人。

■楠本奇蹄 くすもと・きてい
2017年より暫定句会、豆の木、2021年より子連れ句会に参加。第11回百年俳句賞最優秀賞。句集『おしやべり』(2022年、マルコボ.コム)。

■石原ユキオ いしはら・ゆきお
俳句系YouTubeチャンネル「泣きみかん放送協会」会長。「俳句生活安全缶バッジ」をBOOTHにて販売中。「傍点」幽霊同人。

■中山奈々 なかやま・なな
1986年、大阪生まれ。「百鳥」同人、「淡竹」「奎」所属。胃痛から頭痛に変わるパターンが多い。

■松本てふこ まつもと・てふこ
昭和56年生まれ。俳人。「童子」同人。第一句集『汗の果実』(邑書林)発売中。


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