2022-04-17

対中いずみ【空へゆく階段】№67 解題

【空へゆく階段】№67 解題

対中いずみ



「晨」創刊号(1984年5月号)掲載。裕明25歳。年譜には「宇佐美魚目、大峯あきら、岡井省二代表の同人誌「晨」創刊、参加(死去まで続く)」とあるが、田中裕明は文章は発表しつつも作品を発表するのは7号以降となる。

文中、「家持が万葉集巻十九の最後の三首をうたったとき」とあるのは、

春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげに鶯鳴くも

我がやどのいささ群竹(むらたけ)吹く風の音のかそけきこの夕かも

うらうらに照れる春日にひばり上り心悲しもひとりし思へば

である。家持の絶唱、春愁三首と言われる歌、753年2月23日と25日の歌、万葉集の最後を飾る歌である。

また、文中、「家持が万葉集巻十九の最後の三首をうたったとき、ひとびとは誰も聞いたことがないことを聞いたと思ったにちがいない」とあり、青年裕明が(晩年もそうであったが)、詩の新しさをどう認識していたかが垣間見える。田中裕明はそのような句を詠みたかった人だろう。

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