【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
舟木一夫「銭形平次」
憲武●十手が好きなんです。持ってると落ち着くと言いますか…。十手片手にテレビ見たり…。仲見世の小山商店にはいい十手が置いてあります。持ち歩きは軽犯罪法に触れるのでご法度です。家で静かに楽しむ。それが現代の十手です。という訳で、舟木一夫「銭形平次」。
憲武●はい。ある年代以上の皆さまにはよくご存知の、テレビドラマの主題歌です。いいですね。この和と洋の入り混じった感じ。作詞は関沢新一、作曲は安藤実親です。関沢新一はゴジラシリーズや岡本喜八の映画などの脚本家で、作詞も結構手がけています。美空ひばり「柔」、都はるみ「涙の連絡船」などです。作曲の安藤実親は美空ひばり「柔」、こまどり姉妹や水前寺清子などで作曲を担当してます。1966年リリースですね。
天気●いやいや、そんなことより、お茶の間に十手があるってところが引っかかって、曲どころじゃないんですけど?
憲武●そうですか? 孫の手にもなりますよ。一番の歌詞の、「男だったら 一つにかける かけてもつれた謎を解く」のですね、最後の「謎を解く」を小さい頃、空耳で「謎お徳」という女性キャラクターだと思ってました。
天気●「蛍の光」の「明けてぞ今朝は♪」を聞いて、「ゾケサ」ってどんな生物なんだろう? と想像した蓮實重彦みたいなもんですね。
憲武●「ゾケサ」ですか。見てみたいですね。この曲のなにがいいって、バスクラリネットと三味線の掛け合いがとてもいいんです。これはもう和ジャズでしょう。ストリングスセクションとブラスセクションも、いい味出してますね。
天気●バスクラリネット、いい音色ですね。ジャズかどうかはわかりませんが。甲高いトランペットほかホーンセクションと三味線のからみも、安定のアンサンブルです。「三味線ブギ」以来の伝統ですね。
憲武●舟木一夫は1963年に、「高校三年生」でデビューして、その年に「修学旅行」「学園広場」とヒットを出してます。ぼくは1曲めと2曲めはよく知ってますが、三曲めはあまり聞いたことないです。「修学旅行」は、中三の修学旅行の何日か前に、音楽の時間に先生に教えてもらいまして、みんなで歌いました。♪若いぼくらの修学旅行~。
天気●1曲めは知ってますよ。2曲め、ぜんぜ知らない。というか、憶えてない。
憲武●なるほど。ぼくも先生に教えてもらわなかったら、知らなかったでしょう。舟木一夫の声というより、先生の声でよく覚えてます。「銭形平次」の舟木一夫の歌唱は、声に表情があっていいんです。すごく粋を感じるところもあるし、感情の表現が細かいんですよね。この曲を歌うと、歌う人は陶酔しちゃうと思うんですよ。そういう節回しなんですね。YouTubeに福山雅治がギター1本でカバーしてる動画が上ってますが、やはり陶酔してます。
天気●短調からサビで同キーの長調になる。よくある転調ですが、そのへんも本人の気持ちよさの原因の一つかも。
憲武●明るく歌い上げる、って感じですね。テレビで捕物帖をやってない昨今です。なにか一つ、生活に欠けてるものを感じていたんですが、捕物帖を観てないんですね。最近のキャストで捕物帖を観たくもあり、観たくなくもあり、心は複雑です。
(最終回まで、あと765夜)
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