2022-09-24

野口る理 タイガーモノローグ 40句

 

タイガーモノローグ 野口る理

寅年のマフラーぐるぐるぐるぐる巻き
あやふやをほほゑみすごす遅春かな
流氷も頸椎も切るピアノ線
透明を集め蛙のてのひらは
春分や剣玉の糸くすませて
ひらめきの途中ヒヤシンスのささやき
恋猫やセロハンテープ飴色に
夜桜や茶葉ざはざはとやはやはと
花冷のソファーにひそむ巨大発条
春疾風いつも祈りは闇とともに
指明るし天道虫を逃がすとき
薄暑さながらぱりぱりのシーツかな
麦秋や窓辺の突つ張り棒斜め
再会や虹に緑の濃き中野
金髪かつ短髪こんな風に汗
海の日の誰も傷つけないカッター
蛍とほく水族館は濡れてゐる
海月なり光あれどもなけれども
向日葵に強き一理のありにけり
おとなりも見てゐる投網めく花火
水撒けば砂縮こまる残暑かな
てつぺんはいくつもあつて青とんぼ
踊りつつ踊らぬ人を見てをりぬ
稲妻や重機も眠るときうつむき
木犀にあらためて夜の来たりけり
秋の夜の猫座なら尾の躍動感
タピオカが雨の子規忌を揺れてゐる
集まつてゐて桃達の触れ合はず
虫籠に三百日の不在かな
クリップを集めて軽し火恋し
はつふゆはお辞儀のあとのつまさきに
帰り花束ねて誰も彼も敵
綿虫のふるさととして黙す樹々
冬晴れやパーカーのひもあいまいに
枯蟷螂逃がす手つきのまま眠る
等分ぢやなくて二人の窓へ雪
贋物が彩るクリスマスツリー
白雲や聖歌に出てこないわたし
かまくらに残れるグミの昏さかな
木菟の端ひつ摑みそれつきり






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