2023-01-22

岡田一実氏の問題提起 第42回現代俳句評論賞受賞のことばから 夜來風雨

岡田一実の問題提起
第42回現代俳句評論賞受賞のことばから

夜來風雨


11月12日、北九州市・JR九州ステーションホテル小倉にて第59回現代俳句全国大会および、各賞受賞式が行われた。

第22回現代俳句大賞は川名大、第77回現代俳句協会賞を林桂、堀田季何、第42回現代俳句評論賞を岡田一実、第23回現代俳句協会年度作品賞を松王かをりの各氏が受賞した。中村和弘会長は川名氏の功績として「新興俳句を体系づけて、しかるべき俳壇的な位置に置き、かつ、作家を発掘したこと」と称賛した、とある。特に、僕が注目したのは、岡田一実氏の受賞だった。

2022年現代俳句10月号で、岡田一実氏は、自らが、統合失調感情障害という障害を持っていると述べる。そして、杉田久女も晩年は精神病院で過ごしたと述べる。岡田一実氏は、杉田久女は、何重もの偏見に満ちた眼差しを受けることになる。さらに、強固な男尊女卑社会で女性俳人として読まれる困難さもあったと述べる。彼女の「伝説」が俗情を駆り立ててきた。しかし、久女自身のテクストを少しずつ読むうちに、私には彼女の一般に考えられているものとは別の像が見えてきたと岡田一実氏は述べている。久女は優秀で、努力家で、センスが良く、他者に完璧を求めるきらいがあった。彼女には深い共感と感銘を覚えながら、今回の評論を書いたと岡田一実氏は述べている。

現代は、久女の頃よりは、男尊女卑社会がいくぶんか改善されてきたが、依然として深く女性差別が残っている。…久女も優れた評論を数多く残した。現代俳句協会には審査員のジェンダーバランスの是正を求めるとも述べている。久女のテクストそのものが広範に読まれるようになれば幸いと述べている。以上、2022年現代俳句評論賞受賞のことばを2022年現代俳句より引用した。

第42回現代俳句評論賞受賞の岡田一実氏の受賞は、差別や偏見に苦しむ俳人の契機に変わっていく。社会的なマイノリティー差別や、女性差別、そういったものを岡田一実氏の受賞は、俳壇に問題提起している。

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