【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
ジェフ・ベック「グッドバイ・ポークパイ・ハット」
天気●1月10日にジェフ・ベックが亡くなりました。私はファンじゃないし、たくさん聴いているわけじゃないのですが、追悼ということで、取り上げたいと思います。キャリアの長い人ですから、どれを聴くか迷うのですが、比較的最近のライブから、「グッドバイ・ポークパイ・ハット」を。
天気●チャールス・ミンガスが書いたジャズ・スタンダードです。
憲武●1959年の曲で、サックスがメインの、深い哀悼の念の感じられる曲です。「ミンガス」というアルバムを発表したジョニ・ミッチェルもカバーしてますね。
天気●ジェフ・ベックのこの演奏、ジャズ的かというと、ぜんぜんそうじゃない。かといって、ロックとも言えない。ジェフ・ベック・スタイルのギター演奏。オリジナルを確立した人だなあと、つくづく。で、このスタイル、ソロでも伴奏でもなく、なんというか総合的な聴かせ方・見せ方というところがミソだと思うんです。
憲武●ジェフ・ベックの解釈は、時に破壊的な音も聴かせますね。
天気●具体的なことを少し言えば、右手でのアーム操作が多様です。いろんなことをする。こういうのを見ると、「表現」ということを強く意識したギタリストだななあ、と。
憲武●なんか様々な音色が聴こえて、同じ音色は出さないというようなことを思っているのかな、と思いました。
天気●若い頃からブリティッシュ・ロックでギター・ヒーローでしたから、ルーツとしてブルースなんだろうなと漠然と思っていたのですが、数年前に、自分が持っているギターを紹介する動画を見て、1本1本鳴らしてみせるんですが、それがかなりカントリー・ミュージック的で、ちょっと驚いた。ああ、こういうのが太いルーツなのか、と。
憲武●やはりジェフ・ベックに限らず、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリンなど他のバンドにも、根っことしてのカントリー・ミュージックを感じます。
天気●振り返ると、むかし、ジェフ・ベック、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジがブリティッシュ・ロックの三大ギタリストみたいな捉え方があって、生年を調べてみると、ジェフ・ベックが1944年6月24日、エリック・クラプトンが1945年3月30日、ジミー・ペイジが1944年1月9日。ほぼ同年代。全員が、日本でいえば「後期高齢者」。私たちが10代の頃、ロック音楽を聞き始めたときのロックスターはほとんどが70代以上。おじいさん・おばあさんなわけで、ということは、こっちもずいぶんと爺さんになったということです。当たり前ですが。
(最終回まで、あと726夜)
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