【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
かしまし娘「アリューシャン小唄」
憲武●歌謡曲特集です。まだまだお正月気分も少しあるということで、お笑い系を取り上げてみます。かしまし娘で「アリューシャン小唄」。
憲武●この曲のリリースは1965年で、かしまし娘のほかに三沢あけみ、こまどり姉妹、久美悦子、美空ひばりなど、たくさんの歌手に歌われていて、それぞれの歌詞が少しずつ違っています。作詞作曲不詳ということになってますが、それぞれ作詞者がいて、替え歌ということになっているようです。
天気●A面とB面で違う歌手というのはこのところは見ませんが、昔は当たり前だったんでしょうね。この当時はドーナツ盤が150円ですか。私が初めてシングル盤を買ったのは70年近くで、たしか400円という記憶があります。短期間でずいぶんな値上がりです。記憶違いなのかな?
憲武●この曲、レコードじゃなくてソノシートなんですが、ソノシートって、店頭で売られてたんでしょうか。付録について来るものと認識してました。
天気●ソノシート、売ってましたよ。小学校のときアニメの主題歌とかが入ったやつ、たくさん持ってました。ただし、レコード屋さんじゃなくて、本屋のおじさんがくれたんですけどね。ソノシートだから安かったのでしょうね。
憲武●そう! 思い出しました。僕も持ってましたよ。朝日ソノラマのシリーズ。鉄腕アトム、鉄人28号、狼少年ケン、風のフジ丸、ジャングル大帝などです。
天気●EP盤(ドーナツ盤)の値段をちょっと調べてみると、1965年当時、330円だったようです。
憲武●で、「アリューシャン小唄」です。曲調はのんびりしてますが、内容は海の男に対する失恋、というか叶わぬ恋ですね。アリューシャン列島は、アラスカ半島からカムチャッカ半島に至る二千キロ近い弓状の列島で、玉砕の島、アッツ島もここにあります。北の海ですので鰊漁が扱われてます。唐太の天ぞ垂れたり鰊群来ですね。
天気●誓子ですか。「にしんくき」ってヘンな季語だよね。「くき」ってあたりが。
憲武●梅里書房の「誓子俳句365日」には「かつて鰊は、春の彼岸ごろから、主として北海道、樺太の西海岸に産卵のため大群をなして押し寄せることがあった。これを『鰊群来』と言った」と三橋敏雄が書いていますが、「言った」って誰が言ったんでしょう? 漁師たちでしょうか。
天気●いずれにしても季語的には春。「渡り漁夫」という季語も思い出されて、意中の漁師さんは地元の人ではなかったかもですね。
憲武●僕もなんとなくそんなイメージで聴いてました。それはそうと、当時のかしまし娘は、どんなステージだったのか、ちょっと拝見してみましょう。
憲武●はい、抱腹絶倒ですね。かしまし娘は正司歌江、正司照枝、正司花江の三姉妹の音曲漫才で、1956年に結成されてます。ラストの「ウチら陽気な」で始まるかしまし娘のテーマは有名です。
天気●ギター2本がギブソンのフルアコ。楽器もきちんとしていますが、いま見ると、演奏技術もしっかりしてます。
憲武●はい。大正テレビ寄席などでよく見ました。いやあ、正司照枝、大好きだったんですよ。エリック・クラプトンのファンで来日のたびに観に行っているようです。
天気●キャラの棲み分けがしっかりしていますよね。照枝は次女キャラそのもの。クラプトンの曲、家でちょろっと弾いてたりして。
憲武●今は御三方、だいぶお年ですし、ドラマなどでたまに見かける程度ですが、心がブワーッと高鳴ります。
(最終回まで、あと727夜)
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