後記 ◆ 上田信治
10句作品の山岸由佳さんは、昨年10月に第一句集『丈夫な紙』(素粒社)を出されたばかり。五七五で歌うことを最小限に抑えた文体、という印象を受けました。いま俳句を読んでいるということを忘れさせてしまうほどのクールさなんですが、その冷静さでカードを開くようにして示されるモチーフが、じわじわと良いのです。〈デパートを出て宝くじ売場の雪〉〈東京を離れて三日兎抱く〉〈冷蔵庫ひらいて鳩のゆめのなか〉
イベントレポートの小川楓子さん『ことり』(港の人)も、昨年5月刊行の第一句集。自分が愛誦する〈永日のきみが電車で泣くからきみが〉〈冬の水日記つけないわたしたち〉も入っているし、未知の句であった〈限りなくはじめのやうに今も夏至〉〈熱つぽく5について語るへんな毛布〉〈ゆりかもめ曇り日のおしやれさつてさ〉に出会うこともできました。
いい句集がつぎつぎ出ますね。
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「10句選ふたつ」は、総合誌の特集ページのための一企画として依頼されたお仕事。それぞれ「青春詠」と「ただごと」についての特集でした。
こういう特集はだいたい総論があって、各論があって、10句選がいくつかという構成になっているのですが、自分は、自分のページが特集トップになっていいように、なんなら総論として読めるように書きます。
楽しい仕事なんで、だいたい頼まれたその日に選んで書いてしまいます。
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それではまた、次の日曜日にお会いしましょう。
no.825/2023-2-12 profile
■山岸由佳 やまぎし・ゆか
■友定洸太 ともさだ・こうた
1990年生まれ。長嶋有主催の「なんでしょう句会」で作句開始。「傍点」同人。2022年、全国俳誌協会第4回新人賞鴇田智哉奨励賞受賞。
■三島ゆかり みしま・ゆかり
俳人。1994年より作句。http://misimisi2.blogspot.com/
■中嶋憲武 なかじま・のりたけ
1960年生まれ。「炎環」「豆の木」2013年週俳eブックス「日曜のサンデー」2018年 第四回攝津幸彦記念賞・優秀賞受賞。2019年 第0句集「祝日たちのために(港の人)」山岸由佳とのコラボレーションによるwebサイト「とれもろ」
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